人は、命じられたことを義務感でやるのではなく、
自分のこととして物事に取り組んではじめて、いきいきと行動する。
組織が進化を続けるための原動力は、そこで働く人びとの内発的動機にもとづくエネルギーである。人は、命じられたことを義務感でやるのではなく、自分のこととして物事に取り組んではじめて、いきいきと心身をかけて考え、行動することを始める。そのプロセスのなかで自らに課す試行錯誤が人を開花させ、さらなる情熱を生みだす。そのような個人のありようが組織をつくり、人の成長のみならず、持続的な組織の成長を下支えしていくのである。
その一方で、人が自分で自分を律することは難しく、ともすれば易きに流れてしまう弱さを持っている。そういった弱さも持つ人の可能性を引き出す環境となるのは、互いに協力し合い、切磋琢磨しあう人との結びつき、そのような関係性をベースに持つネットワークやコミュニティの存在である。
人が人として自律的に在るためには、それゆえに、他者を受容し尊重することと、主体的に人や組織に関わり続けることが欠かせない。
組織に属する人は、ひとたび仕事のやり方が確立すると、それを定常として維持しようとする。それは安定化を前提とする組織の秩序や仕組みとあいまって、そのままにしておくと、組織は確実に硬直化の方向に進んでいく。
しかし、どんな人間も、組織も生き物(生きたシステム)であり、たえず変化していくなかで、さまざまな矛盾や問題を生成するものである。それが自然な姿であるがゆえに、組織の中に問題があること自体は、実は問題ではない。本当に問題なのは、問題があること自体を否定して”無いもの”にしようとすること、問題を顕在化することによって生じる揺らぎを、組織進化の必要なプロセスとして認めないことである。
組織は生きているかぎり、新しいものを取り入れながら変化していくものであり、よりよく変わっていくときには必ず混乱を伴う。それを自然な状態として受け容れて、「揺らぎのなかから新しいものが生まれる」という価値観を備えもつことができるかどうかが、組織の進化を大きく左右する。