ポジティブフィードバックとは、評価対象者の良い行動や成果を肯定的な言葉で伝える手法のことです。
ポジティブフィードバックの効果として、受け手に安心感を与え、挑戦する意欲を高めます。さらに簡単に評価することにとどまらず、長期的に組織やチーム内でポジティブな文化を醸成することも期待できます。一方、ネガティブフィードバックは、受け手の課題や欠点に焦点を当てるため、モチベーションを低下させる可能性があります。これからポジティブフィードバックを具体例を交え、わかりやすくお伝えします。なお、ネガティブフィードバックは別のページで解説しています。
INDEX
ポジティブフィードバックの基本とは?
ポジティブフィードバックの基本は、受け手の良い行動を強調し、具体的な成果を伝えることです。
これにより、受け手は自分の努力や成果を認識しやすくなり、自己肯定感が高まります。その結果、次の行動が改善し、成長を促す効果が期待できます。
企業や組織でポジティブフィードバックを活用すれば、より良いコミュニケーションが生まれ、チーム全体の一体感を高めることができます。
ポジティブフィードバックの定義
ポジティブ・フィードバックとは、相手の行動や成果の中から肯定的な部分を強調し、相手にその価値を伝える正のフィードバックのことです。
そのため、ポジティブフィードバックの注意点として、このアプローチが単に褒めることとは異なるという点です。
フィードバックという言葉は英語ですが、日本語では人や組織に対する反応・意見・評価のことです。
心理学での背景と注目される理由
心理学の研究から、ポジティブフィードバックは自己肯定感やモチベーションを向上させる効果があると言われています。
例えば、ハーバード大学のポジティブ心理学者のショーン・エイカー氏は、「研究や実証的研究によって、意識して人に親切にすることで、幸福度が高まることが確認された」と言っています。
また、フィードバックは心理学だけでなく、医学や看護の分野でも注目されています。そのため、医療関連の研修でも学ぶことができます。
ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの違い
フィードバックのやり方にはいくつかの種類があります。
ポジティブフィードバックとは、相手の行動や結果を承認したことを肯定的な言葉で伝えて、その行動を促すアプローチです。
また、ポジティブフィードバックは相手の可能性を信じ、成長を目的に伝えるため、傷つきづらくなります。その結果、お互いに前向きに進むことができます。
一方、ネガティブフィードバックとは、具体的に相手の問題点や改善点を指摘することで、行動の修正を促すアプローチです。
要約すると、どちらのアプローチが良いか悪いかではなく、相手の状況に応じて使い分けることが大切です。
ネガティブフィードバックとの具体的な違いとは
ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの具体的な違いを対比しながらお伝えします。
ポジティブフィードバックは、相手の良い行動や成果を強調し、前向きな言葉で伝えます。これは相手の強みにフォーカスし、可能性を拡げるコミュニケーションになるため、相手のモチベーションや自己肯定感が高まります。
一方、ネガティブフィードバックは、主に具体的に問題点や改善点を指摘します。これは相手ができていないこと、苦手なことにフォーカスし、指導や指摘が行われるため、前向きに受け止めづらくなります。
ただ、ネガティブフィードバックをやめればよいというわけではなく、適切にネガティブフィードバックもすることが必要です。
つまり、両者を効果的に組み合わせることで、個人の成長だけでなく、企業や組織全体のパフォーマンスを向上させることにもつながります。
それぞれの特徴と比較
フィードバックには各々特徴があります。
ポジティブフィードバックの特徴は、相手の達成感やモチベーションを高めることです。さらに、心理的安全性を高めることができれば、意見交換がしやすい状況も作り出すことができます。
一方、ネガティブフィードバックの特徴は、具体的な課題や改善点を指摘することで、相手の目的意識を高めることです。
ネガティブフィードバックは、課題克服やスキル向上が求められる段階ではメリットがあります。ただ、内容や伝え方でストレスを与えるデメリットもあります。そのため、ネガティブフィードバックをする際は伝える側も、受け取る側も肯定的に捉えられる場にしなくてはいけません。
両者の特徴を理解し、状況に合わせたフィードバックを選択することで、個人の成長を促進することができます。
ポジティブフィードバックを実施するメリットと効果
ポジティブフィードバックをするメリットと効果として、受け手の自己肯定感や自信を高めることができます。その結果、生産性が向上するという流れが自然かつ継続的に生まれます。
また、職場内で適切なフィードバックをすることで、コミュニケーションが促進され、目標達成に向けた前向きな雰囲気を醸成することができます。その結果、メンバー間の信頼関係や結束力が高まります。
心理的安全性の向上
ポジティブフィードバックは、心理的安全性を高める上で効果的です。
ポジティブフィードバックにより、相手は自分の意見が尊重されたと感じるため、安心して、積極的に発言することができます。その結果、クリエイティブなアイデアが増え、新しい価値を生む可能性が高まります。
さらに、職場内で心理的安全性が醸成されていれば、意見が対立しても、建設的で前向きな議論になりやすいという効果があります。このような環境であれば、信頼関係や結束力が高いチームになり、生産性の向上も期待できます。
心理的安全性を高めるためには、どんなに小さいことでも良かった点は、言葉にして伝えることが効果的です。これが相手の自信につながります。
部下の成長への促進
ポジティブフィードバックにより、部下の成長や自信を促進することができます。
ポジティブフィードバックをする際は、部下の具体的な努力や成果を的確に伝えることや、相手の過去の実力や能力と比較して伝えることが効果的です。これにより、部下は自分の強みや得意な分野を認識することができます。
適切な評価を受けた部下は、スキル向上に関する意欲が高まり、積極的に業務に取り組むようになります。その結果、個人の成長が組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
モチベーション向上の実現
ポジティブフィードバックにより、受け手は行動や成果が認められたと感じることで、モチベーションが高まります。
ポジティブフィードバックにより、判断軸が生まれれば、自分は次何をすればよいのか、自分は何を求められているのか、自ら気づくようになります。その結果、前向きに業務に取り組むことが新たな成功へとつながっていけば、さらにモチベーションは向上します。
さらに適切なポジティブフィードバックは、部下の成長意欲を高めるだけでなく、目的意識を明確にする効果もあります。
アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタール博士によると、「人は期待されたとおりに成果を出す傾向がある」ということです。これをピグマリオン効果といいます。
人は次のゴールが明確で、それに向けて少し難しそうだけれど、挑戦してみようとワクワクしている時が最もやる気が出ると言われています。
良好な人間関係構築への貢献
ポジティブフィードバックは、人間関係構築を良好にする効果があります。
ポジティブフィードバックは相手の良い面を評価して伝えることで、信頼関係が深まります。これにより、チーム内の心理的な距離が縮まれば、意見の相違が生じた場合でも建設的な対話が可能になります。
職場内のコミュニケーションや連携が促されることで、チーム全体のパフォーマンスが高まります。やがてポジティブフィードバックを重視する風土が醸成すれば、協力的で良好な人間関係を維持しやすくなります。
アメリカの心理学者ザイアンス氏によれば、人や刺激に繰り返し接すると、好感度や印象が高まると言われています。これを単純接触効果といいます。その単純接触の内容がポジティブフィードバックであればなおさら、相手への印象が良くなり、人間関係を築きやすくなります。
ポジティブフィードバックの方法と導入の手順
ポジティブフィードバックを効果的に実施するためには、具体的な方法を理解し、それを適切に導入する手順を理解することです。
まず、相手の良い行動や成果を観察し、その行動がどのように成果につながったのかを把握します。
次にポジティブフィードバックをする表現方法やタイミングを考えます。
相手が受け入れやすい言葉や表現を選ぶことで、相手の自己肯定感や意欲を高めることができます。そして、タイミングとしては、相手が行動した直後や具体的な成果が見られた直後を選ぶことで、ポジティブな印象が伝わります。
明確かつ具体的にポジティブフィードバックをすることで、相手の理解が深まり、行動の再現性も高まります。
具体的な導入方法の解説
ポジティブフィードバックを導入する際は、いくつかのポイントをおさえることが必要です。
1つ目は、目的を明確にします。目的を明確にすることで、相手に意図が伝わりやすくなり、内容の理解が深まります。
2つ目は、自分が観察した行動のどの点が、どう良かったのかを的確に伝えます。その際はどんなに小さいと思うことでも伝えることで、相手は評価点が分かるため、改善に向けたモチベーションが高まります。
3つ目は、ポジティブフィードバックをする頻度は、短いスパンで定期的に行います。これにより、相手に本気度が伝わります。
例えば、部下からの報連相に対しては、すぐに返事をすることが大事です。返事の速さもポジティブフィードバックの大事な要素のためです。
4つ目は、相手がポジティブになるように、できれば笑顔で、明るい声で伝えます。さらにポジティブフィードバックをした後は相手の意見や感想を聞くプロセスを略さないことです。これにより、双方向の理解が深まります。
5つ目は、ポジティブフィードバックをする場所は、会議室でなくても、歩きながら伝えても良いです。内容に合わせて、相手が受け取りやすい場所、人間関係が構築しやすい状況を選びます。
導入における注意点
ポジティブフィードバックを導入する際にはいくつかの注意点があります。
1つ目は、曖昧な表現ではなく、具体的に伝えることです。とりあえず何でも良いからと制御せず、やたらと褒めることとは異なります。
2つ目は、感情的に叱らず、受け手の性格や状況に合わせて伝えることです。大事なことは叱ることではなく、一緒に解決策を見つけて、前向きに成果を出してくれることです。そのため、ポジティブフィードバックでは、客観的に事実を説明して、未来思考で話します。感情的に叱ることは、主観的な言葉をぶつけるだけです。
3つ目は、他人と比較するフィードバックも注意が必要です。もし、比較したいなら、過去の相手と現在の相手を比較することです。
ただ、成長意欲が高い部下の場合には、時にネガティブフィードバックが必要な時もあります。
効果的にポジティブフィードバックを行うコツ
効果的にポジティブフィードバックを行うコツは、受け手の目標をできる限り具体的かつ測定可能な内容に設定することです。
具体的な目標が定まることで、受け手が進捗や達成度を理解しやすくなります。その結果、目標が達成した時に具体的な努力や成功要因をフィードバックできるため、成長を実感しやすくなります。
適切な目標設定の重要性
適切な目標とは単に進捗が測定可能なだけでなく、明確かつ達成可能なゴールとなる目標のことです。目標は生産性やモチベーションが向上するものであれば、尚良いです。
適切な目標を設定することで、受け手はその達成状況を理解しやすくなります。目指すべき方向性が具体的になり、さらに目標が達成すれば、自らの成長を実感しやすくなります。
サンドイッチ話法の活用法
サンドイッチ話法とは、まず前向きなコメントを提示し、その後改善点を指摘し、最後に再度ポジティブなフィードバックでまとめる手法です。
最初と最後にポジティブな言葉で架け橋を作ることで、受け手はネガティブな内容が含まれていても、会話全体がポジティブな印象になります。
受け手は建設的な意見として受け止めることで、改善点を理解するだけでなく、自信やモチベーションも維持しやすくなります。
振り返りと評価の意味
ポジティブフィードバックにおける振り返りと評価の意味として、自身の行動や成果を振り返ることで、何が成功をもたらしたのか、どこに改善の余地があるのかを分かることです。
例えば、振り返りの機会として、定例会議でアジェンダに組み込む方法があります。その際は具体的な場面を挙げて、行動がどのような意味を持ち、どのように成果に結びついているのかを話し合います。
これにより、受け手は自分の強みを理解し、モチベーションや自己効力感を高めることができます。
ポジティブフィードバックのまとめとポイント
ポジティブフィードバックとは、、コミュニケーションを円滑にして、受け手のモチベーションや自己肯定感を高めるための手段です。
ポジティブフィードバックをする際は、相手の特性に応じて、具体的な行動や成果について評価や承認することです。
これにより、受け手がより受け入れやすくなり、個人の成長を促すことができます。
ポジティブフィードバックを継続することで、ポジティブな文化が企業や組織全体に広がり、長期的な成長を期待することができます。
成功のために押さえるべきポイント
ポジティブフィードバックを成功させるために、押さえておくべきポイントがいくつかあります。
1つ目は、具体性を持たせることです。自分のどの行動が評価されたのかを理解できれば、次回以降の行動に反映することができます。
2つ目は、叱るのではなく、ポジティブな言葉遣いや言い方に言い換えることです。言い方を少し工夫することで、部下への伝わり方が変わります。
3つ目は、タイムリーに行うことです。行動した時や成果が出た直後にフィードバックをすると、受け手はその時の状況や感情を思い出しやすくなります。
4つ目は、相手に自信を持たせるような前向きな言葉で締めくくることです。この最後の一言が受け手のモチベーションを高め、チームや組織全体の雰囲気を向上させるきっかけになります。
ネガティブフィードバックとのバランスの取り方
ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックのバランスを取ることが大切です。
ネガティブフィードバックとは相手の改善点や課題を指摘し、成長を促すためのプロセスです。しかし、ネガティブな内容に偏りすぎると、受け手のモチベーションを低下させる可能性があります。
そのため、ネガティブフィードバックをしたい場合は、サンドイッチ話法の活用など、ポジティブな内容と組み合わせます。
また、単に問題点を指摘するだけでなく、具体的な改善策を示すことも大切です。
受け手がフィードバックの内容を受け止めやすくなることで、前向きな気持ちを維持でき、成長につなげやすくなります。そのため、ポジティブフィードバックをする際は、タイミングや言葉の選び方を工夫します。
相手を尊重する気持ちを持ち、企業や組織にポジティブフィードバックを実践していきましょう。
フィードバックのスタートガイド
フィードバックを詳しく学びたい場合は、下記の参考文献だけでなく、以下の書籍も参考にしてください。
フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 中原 淳(著)
はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す「全技術」 中原 淳(著)
ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術 難波 猛 (著)
【参考文献】
みんなのフィードバック大全 三村真宗
国際エグゼクティブコーチが教える人、組織が劇的に変わる ポジティブフィードバック ヴィランティ牧野祝子