全国の社員100名以上の企業の一般職・管理職・役員およそ6,000名を対象に行った「組織に関するアンケート調査」の結果、「コミュニケーションスタイル」「仕事や組織への貢献意識」「柔軟性や失敗を恐れない姿勢」といった価値観について、若手社員と40代~60代との「年代の壁」が浮き彫りになりました。また、管理職・役員が20代社員をマネジメントする際に感じる困難の上位の回答は「パワハラ・セクハラに気を遣う」「一律の対応が難しい」「ストレスを感じやすい部下」でした。これらは、2024年の新語・流行語大賞「ふてほど」でも表現された世代による価値観のギャップを示しています。本調査結果を受けて、「年代差による価値観・考え方の違いに対処する方法」についても解説します。

「コミュニケーションスタイル」「仕事や組織への貢献意識」「柔軟性や失敗を恐れない姿勢」といった価値観、若手社員と40代~60代との「年代の壁」が浮き彫りに

Q.あなたの仕事に対する価値観について、あなたの考えに当てはまる選択肢をすべて選んでください。
<年代別集計・20代が他の年代より多く回答した項目>

20代が他の年代より比較的多く回答した項目は次の通り。

・「上司からのフィードバックは頻繁に受けたい」14.4%
・「転職を視野に入れたキャリアアップを考えている」14.5%
・「対面や電話より、オンラインやチャットの方がコミュニケーションしやすい」9.8%

<年代別集計・若い世代ほど回答が少ない項目>
若い年代ほど回答が少ない項目は、次の3種類に分類できる。

1.コミュニケーションスタイル…若い年代ほど、仕事に関する人と対等に・積極的にコミュニケーションをとり、積極的な発言の割合や、懇親の機会の意義を認める割合が低い。

2.仕事や組織への貢献意識…若い年代ほど、組織や顧客への貢献意識が低く、プライベートの時間も仕事に費やす割合が低い。

3.柔軟性や失敗を恐れない姿勢…若い年代ほど、効率の良いやり方を柔軟にとる割合、失敗を恐れずチャレンジする割合が低い。

これらは若い世代ほど割合が低くなっているため、40代~60代の価値観と、20代・30代の若手世代の価値観の違いが「年代の壁」として表れている。

仕事に対する価値観・若い年代ほど回答が少ない項目【年代別】

40代~60代の管理職・役員が20代社員のマネジメントで感じる困難は「パワハラ・セクハラに気を遣う」「一律の対応が難しい」「ストレスを感じやすい部下」など

Q.あなたは、現在、20代の若手社員をマネジメントする際に、どのような困難を感じたことがありますか。当てはまるものをすべて選んでください。
<単純集計>(40代~60代の管理職で「20代以下の部下がいたことがない」人を除く)

上位5つの回答は次の通り。

・「『パワハラ』にならないよう、部下と接する際に気を遣うことがある」37.0%
・「『セクハラ』にならないよう、部下と接する際に気を遣うことがある」25.9%
・「部下の中でも価値観が多様であり、一律の対応が難しい」25.4%
・「仕事のプレッシャーに対してストレスを感じやすい部下がいる」24.7%
・「モチベーションを高めることが難しい部下がいる」23.7%

40代~60代の管理職・役員が20代の社員をマネジメントする際に困難を感じること

40代~60代の管理職・役員が20代の頃に体験したことは「飲む機会が頻繁」「残業や休日出勤が当たり前」「喫煙所で雑談」「困難な仕事で成長」「パワハラ」など

Q.あなたが20代だった頃、職場で体験したことについて、当てはまるものをすべて選んでください。
<単純集計>(40代~60代の管理職で「20代以下の部下がいたことがない」人を除く)

上位5つの回答は次の通り。

・「上司や職場の人とお酒を飲みに行く機会が頻繁にあった」46.7%
・「職場では残業や休日出勤が当たり前だった」46.7%
・「喫煙所で雑談している人がよくいた」45.0%
・「困難な仕事を乗り越えて成長できた」40.7%
・「上司や先輩の『パワハラ』が当たり前にあった」35.8%

40代~60代の管理職・役員が20代だった頃、職場で体験したこと

40代~60代の管理職・役員が20代の頃の体験と、現在の20代社員のマネジメントとのギャップの表れ、「部下を成長させることが難しい」「パワハラのリスク」など

Q.あなたは、現在、20代の若手社員をマネジメントする際に、どのような困難を感じたことがありますか。当てはまるものをすべて選んでください。
Q.あなたが20代だった頃、職場で体験したことについて、当てはまるものをすべて選んでください。

「40代~60代の管理職・役員が20代の若手社員をマネジメントする際に感じる困難」(左)と、「40代~60代の管理職・役員が20代の頃に職場で体験したこと」(右)を対比した。このように、40代~60代の管理職・役員が20代の頃と現在とでは、職場環境や社員の価値観には大きなギャップがある。

40代~60代の管理職・役員が20代社員をマネジメントする際に感じる困難40代~60代の管理職・役員が20代の頃に職場で体験したこと
■部下を成長させることが難しい

・「モチベーションを高めることが難しい部下がいる」23.7%
・ 「困難な仕事を嫌がる部下がいる」21.9%
・ 「論理的な説明をしないと納得しない部下がいる」10.4%
・ 「直接的なフィードバックをすると傷つきやすい部下がいる」13.4%
・ 「今すぐの評価を求めて、地道な成長への忍耐が足りない部下がいる」11.2%
・「自分の考えに自信を持てない部下がいる」16.4%
●20代の頃は頑張って困難を乗り越えて成長した

・「困難な仕事を乗り越えて成長できた」40.7%
・「上司から一方的に指示・命令が下され、部下は口を挟めなかった」21.0%
・「人事評価(考課)は上司の裁量次第だった」34.8%
・「仕事のやり方をきちんと教えてもらわず、上司や先輩の真似をして覚えた」29.3%
・「自分自身のキャリアプランはあまり考えていなかった」28.6%
・「成果を出して早く昇進したいと一生懸命頑張った」22.2%
■部下にパワハラと認識されるリスク

・「『パワハラ』にならないよう、部下と接する際に気を遣うことがある」37.0%
・「部下からの評価や印象が悪くならないように、部下と接する際に気を遣うことがある」10.6%
●20代の頃はパワハラが当たり前だった

・「上司から仕事で厳しいこと・難しいことを要求されたことがある」31.3%
・「上司や先輩の『パワハラ』が当たり前にあった」35.8%
・「上司から一方的に指示・命令が下され、部下は口を挟めなかった」21.0%
■女性の部下への配慮の難しさ

・「『セクハラ』にならないよう、部下と接する際に気を遣うことがある」25.9%
・「女性の部下への業務負荷や体調などの配慮に悩むことがある」9.2%
●20代の頃は職場に女性が少なかった

・「職場に女性社員が少なかった」25.9%
・「職場で『セクハラ』が当たり前にあった」19.0%
■部下がストレスを感じやすい

・「仕事のプレッシャーに対してストレスを感じやすい部下がいる」24.7%
●20代の頃はきつい仕事をやらされてきた

・「上司から仕事で厳しいこと・難しいことを要求されたことがある」31.3%
■部下に残業や休日出勤をさせにくい

・「ワークライフバランスの風潮により部下に残業や休日出勤を命じにくい」13.7%
・「仕事が終わっていないのに残業や休日出勤を避ける部下がいる」11.0%
●20代の頃は残業や休日出勤が当たり前だった

・「職場では残業や休日出勤が当たり前だった」46.7%
・「上司から一方的に指示・命令が下され、部下は口を挟めなかった」21.0%

世代が違う人と接して驚いた・困った経験に関する自由回答の抜粋

Q.あなたが仕事をしていて、世代が違う人と接する中で最も驚いたこと・困ったことは、どのようなことですか。自由に回答してください。なお、回答では、「どの世代(20代、50代など)の人と接した際に」、「どのようなことに驚いたのか・困ったのか」を、ご記入ください。
(下記表中のコメントの右にある「(20代→50代)」は、20代の回答者が50代の人と接する中で驚いたこと・困ったことであることを表す)

各年代が40代~60代と接して驚いた・困った経験に関する自由回答の抜粋

 各年代が40代~60代と接して驚いた・困った経験の詳細
自分の意見や経験を押し付ける・今までのやり方を変えようとしない自分の意見を押し付けてくることに困った(20代→50代)
タイパが悪い資料作りを要求される(20代→50代)
とにかく人の話を聞かない、自分のことばかり話す(30代→50代)
リモート、WEB会議に後ろ向き(30代→50代・60代)
・管理職にリモートワークはサボる人がやるものと言われて驚いた(40代→50代以上)
自分勝手自分の仕事しかしない。同じ部署の人が忙しくても協力をほとんどしない(40代→50代前)
電話をとらない。>女性の仕事と思っているようで、出ない(40代→60代)
マネジメント能力に欠け、指示待ち、あるいは指示した通りにしない50代→50代)
パワハラ・得意先と接した際に、怒鳴ることに驚いた(20代→50代)
会社に忠誠を尽くせや会社のお陰とか言う言動にはひく(30代→50代)
パワハラ、激昂する、自分が正しいという考え方を全面に押し出してくる(30代→50代)
長時間労働・残業が当然という考え方残業してまで仕事をするのがすごいことだと感じている(20代→40代以上)
・仕事とプライベートを分けない、休みの日でも仕事を優先する(20代→50代)
・20代~30代は週2日も休みすぎだと言われる(30代→50代)
・過去の自分たちと比較してサビ残が当たり前という価値観(30代→40代以上)
女性差別・セクハラ・子育てへの理解がない・20代の女性職員に個人的な連絡や、食事の誘い、性的な発言(20代→40代・50代)
女性社員は生涯昇格を認めないという古い価値観に驚いた(40代→50代・60代)
育休を取った30代男性のことを悪く言っていて不快だった(20代→50代)
・女性取締役が子供を産んで仕事をセーブしたい社員はいらないと発言(20代→50代)
ITが苦手Excelの使い方が分からず、数式を使わずにすべて入力していた(20代→50代)
PC操作などの理解があまりないことに困った(40代→60代)
ポジティブな評価・作業効率・生産性がアップするアドバイスをくれた(30代→40代)
精神的な安定性に驚いた(30代→50代)

各年代から20代・30代と接して驚いた・困った経験に関する自由回答の抜粋

 各年代から20代・30代と接して驚いた・困った経験の詳細
プライベートの時間を重視して残業しない先輩に仕事を押し付けて自分は定時で帰る姿に驚いた(20代→20代前半)
・仕事に影響が出ると分かっているのにプライベートを重視し休む(50代→20代)
社会人としての責任感・マナーが身についていない・先輩との会話の最中の相槌として「うん」という子が多い(20代→20代前半)
無断欠勤、欠勤連絡をLINEでする(40代→20代)
仕事の失敗をただしたところ、舌打ちされた(50代→20代)
こちらから声をかけないと、報連相が全くない(50代→20代)
かかってきた電話をとらない、電話連絡を嫌がる(50代→20代)
自分勝手・自己評価が高い・社内のルール上決められている手続きを「タイパが悪いからやりたくない」と拒否(30代→20代)
・新卒に自分に合わない仕事だから変えてほしいと言われた(30代→20代)
責任感がない。経験不足から生じた失敗でも人のせいにする(40代→30代以下)
仕事ができていないのに、できていると自己評価している(50代→20代・30代)
打たれ弱い・上司がマネジメントに困るミスを厳しくいうと立ち直れない方が多い。また反省しない(40代→20代・30代)
きびしくすると直ぐやめてしまう(50代→20代)
親から一度も怒られた事のない部下がいた(60代→20代)
パワハラとすぐ訴える人がいる(60代→20代)
キャリアアップへの関心がない・モチベーションがない責任者になることを極力避けようとする傾向がある(50代→30代)
目標意識が薄く、欲しいものもなく、何のために努力させるかがわからない(60代→20代・30代)
栄転であっても転勤を嫌がること(60代→20代)
すぐ退職する・転職が当たり前・新人が突然退職代行で会社を辞めた(50代→20代)
自分の範囲を決めてしまい、外れた仕事をするくらいなら転職を考える(50代→20代)
入社時から既に転職を考えている人がいて驚いた(50代→20代)
自分で考えない・指示待ちで自分の考えで業務を進めようとする姿勢がない(40代→20代)
全て上司に判断を求め、自分の考えを持たずに仕事をしている(60代→20代)
その他、年配社員の常識と違って戸惑うこと出社に否定的、自然発生的なコミュニケーションがしにくい(40代→20代)
カラコン、ネイルアートで出社するのは、どうなんだろう(50代→20代)
・新入社員が会社の飲み会に参加しない(60代→20代)
ポジティブな評価・自身のキャリアプランをしっかり考えているんだと驚いた(50代→20代)
・自分の頃よりもはるかにスマートに人と付き合おうとしている(60代→20代)

スコラ・コンサルト解説~年代差による価値観・考え方の違いに対処する方法

日本社会は、これまで同質性が高いと言われてきました。しかし近年、日本企業においては、世代間の価値観や仕事観、コミュニケーションスタイルの違いに悩む人が増えています。今回の調査でも、世代間のギャップが定量的に浮き彫りになりました。

大まかに言えば、「昭和の価値観vs令和の価値観」のギャップが職場で顕在化しているように見えます。昭和の価値観は比較的均質で同質的とされていますが、令和の価値観はその実態がつかみにくく、若手世代の価値観は多様化していると言われます。また細かく見ると40代~60代の価値観も同じではありません。

このように考えると、私たちが取り組むべき課題は「世代間ギャップを埋める」というよりも、「一人ひとりが異なる個性を持つ」ことにどう向き合うか、という点ではないでしょうか。そして、この課題は若手世代にも共通しています。若手世代が多様な価値観を受け入れる力が高いとは必ずしも言えないからです。

以前、海外駐在経験のある方からお話を伺ったことがあります。その方は、外国人の部下の「違い」は新鮮で面白く感じた一方で、日本人の部下に対しては小さな違いも許容しがたく感じたと話していました。これは、日本人同士では暗黙のうちに同じ文化や価値観を共有していると考えたい願望があるからでしょう。

しかし、実際には日本人同士でも一人ひとり違います。その違いを意識して関係性を築いていくことが必要な時代が来たのです。「分かり合えない」というとネガティブに聞こえますが、人と人は完全には分かり合えないという前提に立つことが必要です。だからこそ、少しでも相手と共通認識を持てる部分を増やしていくことが、チームで働く上で必要であり、その謙虚なスタンスが相互信頼を高め、結果的にチームを機能させることにつながります。

そのためには、「良い・悪い」を安易に判断しない態度が重要です。価値判断を一時的に保留する姿勢、哲学で言うところのエポケー(判断保留)が、違いを尊重する現代において良好な関係性を築く鍵となります。

もちろん、日々の生活や仕事では、だれでも自分の価値観や考え方に基づいて行動します。しかし、相手と関わる際、特に相手を理解しようとする時には、判断を保留し、相手の声に耳を傾けることができるかどうかで、信頼関係を築けるか、さもなくば互いに忌避することになるかが分かれてきます。

日本は「言葉できちんと説明するのは野暮」というハイコンテクスト(背景の文脈を詳しく語らない)な文化を持っていると言われます。しかし、これからはきちんと言葉にして、フラットな立場で語り合うことの必要性が増してくるでしょう。対話を重視する姿勢が求められているのです。

対話には時間がかかります。「言わなくても分かる」と思いがちな昭和世代にとっても、タイパを重視する若者世代にとっても、対話はまどろっこしく感じるかもしれません。しかし、同じ組織や社会で共生していくためのスキルを互いが身につけていかないと、ますます社会の分断が進み、誰にとっても望ましくない方向へ進んでしまう可能性があります。今こそ、互いの違いを尊重し、理解し合うための対話を始めるべき時です。

 

調査概要 
調査主体株式会社スコラ・コンサルト
調査方法調査会社のインターネットアンケートモニターによる回答
調査期間2024年10月18日~2024年10月22日
有効回答数5,161人
従業員役職回答数
一般職(一般社員・係長)2,746人
管理職(課長・部長)1,600人
役員(役員・経営者)815人