企業が自社の強みや個性を理解して、“開かれた”組織風土に転換する

かつて高度経済成長の時代には、日本企業はひとつの“ムラ”として機能していました。結束の強い共同体の中でうまくやっていくためには、お互いが「協調性」や「空気を読む姿勢」を重んじ、「個性を出す」「異論を投げる」ことを自制しがちになります。

いい意味でも悪い意味でも、調和と安定を重視し、関係を壊さないよう配慮し合う組織風土は、企業の中にいまだ根強く残っています。

このような“閉じた”組織風土は、外部環境が変わると、自社の進歩を妨げ、他者や他企業との協働の可能性を狭めてしまいます。自分たち単独では技術革新や新しい価値創造を実現するのが容易ではない今日、企業が自社の強みや個性を理解して、“開かれた”組織風土に転換するタイミングに来ているといえるでしょう。

組織が多様な他者の流入を受け入れ、境界を越えて新たな成長ステージに進む

私は、企業、行政、NPOなどさまざまな組織が協働できる社会をつくることを自分のビジョンとして、昨年、スコラ・コンサルトに入社しました。スコラ・コンサルトが30年間培ってきたプロセスデザインは、そんな社会をデザインするナレッジだと考えています。

たとえば、企業に関わるステークホルダーとの関係性構築、大企業、ベンチャーやスタートアップ企業などビジネスセクター同士のコラボレーション、NPO、社会起業家などソーシャルセクターとのビジネス創出。

自分たちの限界を超えてあらゆる可能性を見出すために、組織は境界線をはずして動き出しています。

このように、組織を越えて自在に協働していくためには、じつは自社の「ミッション、ビジョン」を明確にすることが重要だ、と痛感する出来事がありました。

 

先日、ある700人の村で地域づくりの支援をするNPOの「ミッション、ビジョンのリストラクション」のお手伝いをさせていただきました。

将来にわたる村の存続・発展を考えると、多様な人の流入が必要です。この村では地方創生の追い風もあって、自然体験プログラムやエコツーリズムなど地域交流・移住促進の企画が活発に実施されています。

その一方、タスクが増え、関わる人が多様になったことで、自分たちがどこに向かい、何を実現したいのか、日々の業務に追われてわからなくなる、ということも起こります。

そのとき「ミッション、ビジョン」が不明確だと、向かう方向も曖昧になり、メンバーを束ねることが困難になっていきます。最悪なシナリオとしては、たくさんの人が村を訪れ、たくさんお金も落ちたけれど、それが村にとっての持続可能な取り組みにつながらないという結末もあり得ます。

 

組織が多様な他者の流入を受け入れ、境界を越えて新たな成長ステージに進むためには、現実問題として「ミッション、ビジョン」が欠かせないエッセンスになるのだと実感しています。