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では、どういった女性社員がリーダー候補になるのでしょうか。
今回はリーダー候補の女性社員を見極めるポイントについて説明しましょう。

もともと備わる3つの資質は、女性ならではの“強み”

私が風土改革の支援をしてきた企業で活躍していた女性社員たちは、無条件に愛情を注ぐ育成姿勢や、時には男性管理職を支え、メンバーの強みを引き出し、チームで補完し合って成果を生み出すリーダーでした。

ほかにも共通していたのは、仕事でNGとされがちな「感情」をうまく扱いながら、ていねいに人と関わり、一緒に日常業務の改善を進めていたことです。
また、冷静にお客様視点で物事を見ながら、自身の“強み”を生かし、自然体で気負わないリーダーシップを発揮して、新しい価値創造に貢献していました。

とはいえ、いま説明したのは女性リーダーの完成形の姿です。
リーダーの候補としては、次の3つの資質を備えている女性社員を見つけるとよいでしょう。

(1)絶対的信頼感

立場や役職に関係なく、人の存在を大切にする価値観がある。
人に対する絶対的な信頼感が根底にあると、誰にでも分け隔てなく愛情を注ぐことができる。

(2)強み・特性を見抜く力

隠れているその人の長所、強み・特性を感覚的に見抜くことができる。
そこから可能性を引き出し、成長につなげていくことができる。

(3)高いコミュニケーション能力

上下関係や組織の壁を気にせず、自分と異なる環境や立場の人と対話ができる。
組織が円滑に回るための「つなぐ」役割を果たす。

どのようにして見つければよいのか?

では、これらの資質を見抜くには具体的にどのような点に着目すればよいのでしょうか。
業務の場面で日常的に見られる行動の中から、こうした資質の持ち主を見極めるポイントをいくつか紹介します。

絶対的信頼感の持ち主

損得で物事を見ない人や、分け隔てなく誰に対しても無条件に愛情を注いでいる人が周囲にいないでしょうか。
組織の中で仕事をしていると、どうしても損得や駆け引き、利害関係で物事を捉えやすくなる傾向があります。
自分の利益だけを考えず、みんなのため、全体のために仕事がうまく進むように動いているかどうかは、わかりやすいポイントです。

事務職として長いキャリアがあり、みんなから信頼されている人、見えないところで困っている人を助けている人事や総務のベテラン社員などに、このタイプをよく見かけます。職場を観察してみてください。目立たない人であっても、本当はリーダー向きのお宝人材なのです。

強み・特性を見抜く力の持ち主

「あなたはこういうところがステキね、上手ね」など、どんな小さなことでもポジティブに周囲の人を誉めている人は、他者の強み・特性を見抜く力を潜在的に持っています。
人の強みや可能性にフォーカスする力は、受容力の高さの表れです。

また、「彼は○〇の能力は高いのに、活躍できてないのは残念ねー」などと、一見ネガティブに聞こえる言い方をしている人でも、ポジティブにフィードバックする習慣は日々の訓練で身につけることができるので、リーダーの資質は十分あります。

高いコミュニケーション能力の持ち主

自分から人に声をかけ、自然に会話ができ、表には出てこないたくさんの情報を持っている人はいませんか?
いつもていねいに話を聴いてくれて、そのまま受け止めてくれるから、あの人には話したくなる、相談したくなる、そんな人です。

また、笑顔で「元気?」「大丈夫?」「何かあったら声かけてね」など、さりげなく言葉をかけ、人の状態に気を配っている人もリーダーとして適任です。

こういった資質を持つ人物が、さらに自分や他人の感情をうまく扱うことができるようになると、組織にとって、意図せず起きてしまうハラスメントを防いでくれる存在になります。

実務を通じてリーダーとしての能力を開花させる

リーダーになりうる女性の資質について説明してきましたが、あなたの職場に思い当たる候補者はいるでしょうか?
もし思い浮かぶのなら、早速彼女たちと話をしてみてください。

思い浮かばないとすれば、もしかすると無自覚に固定概念を持ち、レッテルを貼って見ている可能性があります。
そのことを意識し、前に挙げたポイントにフォーカスして、一人ひとりと対話をすることから始めてみてください。

また、候補者が頭に浮かんだとしても焦らないでください。昇格ありきではなく、彼女たちには、実務を通してリーダーとしての能力を開花させるプロセスが必要です。
まだ原石のままの資質を仕事の価値を生み出す能力に転換する必要があるのです。

まずは、社外セミナーや、部門を越えた横のつながりがつくれる研修に参加してもらう機会づくりを始めてください。
それと並行して、小さくてもよいので、自分の業務以外に視野が広がるような仕事の機会、プロジェクトに参画してもらうと効果的です。

このように、自分の強みで仕事に貢献しながら徐々にリーダーの能力を開花させていくサポートをします。
周囲も納得する成果が出てくれば、自ずとリーダーの道が開けていきます。