「地方を元気にする 自治体経営を変える改善運動」を読んで |コラム|スコラ・コンサルト
「地方を元気にする 自治体経営を変える改善運動」を読んで

「地方を元気にする 自治体経営を変える改善運動」を読んで

| 2015.04.15

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本書は「半歩先行く本」である 。

昔、出版社の社長と話をしているとき、次のような指摘があった。

『本という商品は一歩先行く話では、そんな先の話には興味がないと読者に買ってもらえない。しかしすでに世の中によく知られるようになったテーマでは、そんな内容は分かっていると判断され、これも買ってもらえない。結局、本という商品で売れるのは「半歩」先を述べている本が売れるんです。』

それでは、果たして本書は半歩先行く本であるかと言えば、この種の本(自治体経営)で言えば、まさに半歩先行く本だと言える。

 

「自治体経営」の「改善運動」
「改善」活動には、2種類の展開型が存在する。

一つには「問題解決型」であり「目標値の達成型」である。 今一つの展開型は「ありたい姿チャレンジ型」であり「目標値近づけ型」である。

この「ありたい姿チャレンジ型」は「日本型イノベーション」とも呼ばれている。日本型の特色は「半歩」でもありたい姿に近づけば「ワクワク」してくる活動である。本のタイトルが改善「活動」ではなくて改善「運動」となっているのは、日本型の半歩先行く自治体のありたい姿をでさせて「ワクワク」してくる「運動」であることによる。

 問題の視える化=現地現物で気づく

トヨタグループの一社に勤めていたころの話である。

名古屋から大手の部品メーカーの社長が久しぶりにおみえになった。 たまたま、部長が不在であり、次長の私がお相手した。
そこで次のような話が出た。

社長「いやぁ、金田さん、トヨタには驚きましたよ」

金田「何かあったのですか?」

社長「先日、トヨタの新入社員の当社担当になった方がお見えになって、工場を見せてほしいと言われるので、私が案内しました。 見て回って社長室に戻って、感想を求めると、こう言われたのです。

『お宅の工場は人も多いし、在庫も多いですね。』

これには驚きました。学校を卒業して、おそらく初めて工場を見た人が、よく工場の実態を押さえられていると!」

 

私はこの話を次のように理解した。

おそらく会社を出る際に、先輩の購買マンから「工場を見たら、こう言え」と言われたに違いない。そして、この工場見学を通してこの新入社員は「現地・現物」で気づく工場の見方(視える化)を覚えたに違いないと思った。「在庫」と「人」という着眼点があることで、工場の実態を見ることが可能になる。ムダや問題の視える化につながるのである。この本の読者は、工場のトヨタにとっての「在庫」と「人」のように、自治体経営の改善の見方(問題の視える化)が提示されていると感じられるはずである。

 

「改善」の進まないダメ工場

昔、大野耐一さんが工場の視察中には一言の発言もなく、帰り際に一言「在庫が多過ぎる」と言った。この一言で工場長の顔色が変わった。「在庫」が多いとは、何を意味するかと言えば「問題点(ムダ)」を在庫がカバーして見えなくしてしまうことである。

したがって、「改善が進まないダメ工場」ということになる。治体経営においてムダとは何か。 ムダが見えなくなっていないか。改善を進める前に、ムダに気づくことが必要だ。

 

全員参加の改善活動世界一工場

ものづくりの工場では、世界一と呼ばれていた米国が、1970年代に入ると敗戦国・日本に生産性で負ける状態に落ち込んだ。驚いた米国は数多くの視察団を日本の製造業の現場に送り込んだ。 私のいた工場にも数多くの視察団が訪れた。 その視察団の一つで、次のようなことがあった。

工場を見学し会議室に戻り、ディスカッションの始まりに、視察団のリーダーが私から一言言っておきたいと発言があった。

「私の工場では、何か問題が生じて改善しなければならないとき、その処置をするIE(インダストリアルエンジニア)マンはわずかしかいない。しかし今日この工場で確認したら、この工場での改善マンは1500人、全員であるという話であった。全員が「仕事=作業+改善」で、日々改善活動をしていると言う。

これで米国が日本に生産性で負けた理由がはっきりした。 米国は日本の「改善のしくみ」に負けたのだ。」この半歩先への「改善のしくみ(筆者が言う『改善運動』)」が機能すれば、日本の自治体経営は世界一のレベルが期待できる。

 

実践に向けて

「ものづくり」の世界一にまで登りつめたトヨタはいかにして達成し得たか。

私の感覚で言えば、「いつ倒産するかもしれない」という「恐怖感」が根底に常に存在しつづけていることによると感じている。「改善」とはトヨタにとって「生き続ける」手段である。この点、自治体経営に「改善運動」が果たして成り立つのであろうかというのが、私の率直な疑問であった。

しかし、第5章「改善運動のボトルネック」第6章「改善運動のステップアップ」は私の疑問であった「自治体経営の戦略展開の可能性」について、かなり期待を持たせる内容でまとまっているのには感心させられた。日本の人口が減ると、全国の地方自治体の維持が難しくなるとの長期推計が出る中、ダメ元でトライする「まず、やってみる」改善が持つ可能性は大きい。元吉氏の今後の活躍を期待したい。

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