「複業」の創造的意味あいを考える~個の働き方、働き場所はマルチハビテーションに|コラム|スコラ・コンサルト
「複業」の創造的意味あいを考える~個の働き方、働き場所はマルチハビテーションに

「複業」の創造的意味あいを考える~個の働き方、働き場所はマルチハビテーションに

野口 正明 | 2018.10.08

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「複業」の創造的意味あいを考える~個の働き方、働き場所はマルチハビテーションに

この8月末、私はスコラ・コンサルトの社員籍を離れ、9月からパートナープロセスデザイナーとなりました。
そのことで会社との関係を変えたというよりも、「複業」という選択をしたのです。

●「副業解禁元年」って?

今年は「副業解禁元年」なのだそうです。厚生労働省が「モデル就業規則」の中に、会社員の副業・兼業の推進に向けたガイドラインを記述したのは今年1月のことでした。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

とはいえ、実際に副業を検討している人はまだ多くはないでしょう。
でも、国が推進するということは、世の潮流としてすでに出現している事象の追認でもあります。
時代の一つの傾向として、その本質的な意味あいをつかんでおくことは、これからの企業人にとって自分らしい人生、豊かで幸せなキャリアを歩むためにきっとプラスになるはずです。

ということで、今回は「副業」をさらに一歩進めて、未来を先取りした働き方としての「複業」について考えてみたいと思います。
仕事を“主と副”に分けるよりも、いくつかの仕事を同時に持ち、自分の意志で最適なマネジメントをしていくという世界です。

最初にお断りしておきますが、私は、複業のメリットは組織と個人の双方にあると考えています。
ただ、今回は働き手個人の意識にまず訴えたいという意味あいから、個に寄せた視点で論じたいと思います。

●なぜ私は複業を選択したか


複業化の流れが意味するものは「個と組織の対等な関係構築を通じた自己実現型キャリアへの近道」であるということです。

私の場合、それを選択する一番のきっかけは、大きな病でした。
現在53歳ですが、もともと強度の近視で眼球内が緊張状態にあったところに、老化が引き金になって、昨年5月に網膜はく離を発症しました。
通常は、一度手術すれば90数パーセントの人は良くなるらしいのです。
ところが、私の場合は症状が複雑であったようで、その後も再剥離が重なり、短期間に4度の手術入院を繰り返しました。

さすがにもう大丈夫だろうと思っていたら、今年になって、網膜の中心部にある黄斑に穴があく黄斑円孔になり、2018年3月末に5度目の手術。
手術するたびに1カ月もの間、うつ伏せ体勢で安静にしていなければなりません。
本当に鬱々する苦闘の日々でした。

一説によると、大きな病というものは、人生から自分に対する何らかのメッセージなのだそうです。
病床にあって私は、自分の内なる声に耳を傾け、何百時間も真剣に考えました。

私がこれまでキャリアの中心に据えてきたのは、一人ひとりの想いやエネルギーを起点に、チームでひと仕事を成し遂げるプロセス。
それを、企業のみならず地域コミュ二ティにまで広げるというミッションが、自分の中でまったく迷いのないレベルで確信できたのです。

それで飯が食っていけるのかは二の次でした。
企業向けの仕事はパートナーとして続けていく一方、新たに、地域の企業、自治体、NPO、コミュニティおよび地域の介護・福祉、医療、教育関連組織などの規模が小さいチームに対する支援を個人事業としてやっていくことに決めました。

●複業による3つの創造的効用


複業体制はまだスタートしたばかりなのですが、大きく3つの効用が実感として見えてきています。
私は日本の大企業(12年)、アメリカの大企業(6年)、スコラ・コンサルト(12年)というキャリアを合計30年間歩んできましたが、その延長線上にはない、より創造的な効用と言えそうです。 

(1) 自分というリソースの最適活用

これまでスコラ・コンサルトの社員時代、私について同僚からこう評する声もあったようです。
「野口さんは好きな仕事を選んでいる。しかも途中で投げ出すこともある」。
これは見方によればそうなのかもしれません。
私はまったく異なる視点で動いていたのですが。

プロセスデザイナーはたくさんいるが、それぞれの持ち味は違う。
だから、自分を含めたそれぞれの持ち味を、お客様の特性やニーズに最も合った価値提供ができる部分に生かしたい。
また、お客様の活動の進行具合によってサポートに必要とされる私たちのスキルも変わってくるはず。
局面が変わり、他の人のほうがより価値が出せる場合は積極的に任せるべきではないかと。
いま思えば、“社員”としてはちょっと先走り過ぎだったように思います。

しかし、先行きが不透明で、就業や雇用の形態も多様化せざるを得ないこれからの時代には、ベテランも若い世代の人たちも、自分というリソースをどうマネジメントするか、どの仕事にどれだけ投入することが最も合理的であるかを複業家として判断・選択することが許される、いや求められるのではないかと思います。

(2) 多様なものの見方の獲得

同じ組織に集まる人の価値観は、どんなに多様性を求めたとしてもやはり似通ってしまうものです。
ところが、複業でさまざまな組織の人たちと仕事をしていると、一緒に仕事をする人たちの価値観は相当に違ってきます。
複業する立場になると、必然的にさまざまの価値観と接する中で、一つの組織に属して仕事するよりも、より多面的に物事を見る力がつくのではないでしょうか。

(3) キャリアのリスクマネジメント

三つめは実利的な側面です。
移ろいやすく、不透明で、込み入っており、あいまいな、いわゆるVUCAな社会経済の環境下では、いまどんなに隆盛を極めている組織や仕事であっても、急に廃れてしまう可能性を覚悟しなければなりません。それは個人の場合も同じです。

そうした環境の中にあっては、一本足で立っているよりも、何本かの足を持ちながら、もしそのうちの一本がだめになってもなんとかやっていける準備を常にしておくことが賢明で、柔軟なやり方と言えないでしょうか。


最初のほうで、「複業」とは「個と組織の対等な関係構築を通じた自己実現型キャリアへの近道」である、と私なりの定義を述べました。
これまで述べてきたことから、そのこころは何か、主張の背景にあるものがなんとなく伝わったなら嬉しいかぎりです。

副業(複業)化を国が推奨しても、それが社会の当たり前になるまでには、かなりの時間がかかるでしょう。
私と同じような道の選択をたちまち推奨したいわけでは決してありません。
そもそも私は昔から拙速を信条とし、これだと感じたら動いてしまう人間なのです。

やってみたことの中には当たり外れも当然ありますし、手探りばかりの苦しい経験もしょっちゅうです。
それでも先走ることをやめないのは、そこで初めて見えてくる発見や結果の見えないことの面白さを味わっているからでしょう。
そういう経験がこれからのいろいろな協働に生きてくればと思っています。

サブタイトルに使った「マルチハビテーション」という言葉をご存じですか?
複数の居住空間を行き来しながら生活するライフスタイルのことを意味します。
居住空間だけでなく、働き方や働く場所も複数持ちながら、行ったり来たりすることで、自分の生き方にも幅や新たな緊張が増したように感じています。

著者プロフィール

野口 正明

野口 正明

MASAAKI NOGUCHI

「チームイノベーション」を得意とし、事業改革や営業改革、中期経営計画策定等の領域で、個人プレーの限界をチームによって乗り越え、その組織ならではの強みの源泉を発見し、イノベーティブなテーマ創出と実行につ…

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