ダイバーシティとガラパゴス文化が相克する日本企業 <br>~ 多様性の尊重とは「あるがまま」を受け入れる柔軟さ|コラム|スコラ・コンサルト
ダイバーシティとガラパゴス文化が相克する日本企業 <br>~ 多様性の尊重とは「あるがまま」を受け入れる柔軟さ

ダイバーシティとガラパゴス文化が相克する日本企業
~ 多様性の尊重とは「あるがまま」を受け入れる柔軟さ

柴田 昌治 | 2018.05.20

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ダイバーシティとガラパゴス文化が相克する日本企業 <br>~ 多様性の尊重とは「あるがまま」を受け入れる柔軟さ

グローバルに展開し、世界基準で動く企業の感覚でいえば、「ダイバーシティ」というのはすでに目新しい議論ではありません。
日常的に展開されているごく当たり前の現実の一側面です。
そうした世界の状況を背景に、近年、日本企業でもこのダイバーシティという概念が持つ価値の重要性が叫ばれるようになってきています。

ダイバーシティとは多様性、主には人種、性別、年齢、ハンディキャップの有無など人の属性の多様性を意味するものです。
しかし、残念なことに日本企業の現状は、スローガンとしてはその大切さが強調されてはいても、まだまだ実態は真逆の様相を呈している、といっても過言ではないと思われる状況です。
多くの面で世界の諸国と互角以上である我が国ですが、ことダイバーシティという側面ではまさにガラパゴス化の様相を呈しているのが実態です。


時代は変化してもビジネスを変えられない理由

私はよく、大企業の部長クラスを対象に講演する機会を持つのですが、そういう時にも、およそダイバーシティとは言い難い状況を目にしています。
ほとんどの企業が部長といえば、顔ぶれはほぼみんな男性です。
同じような年齢で、しかも同じようなダークスーツを着ています。
たぶん同じような大学を出て、見た目はもちろんのこと、中身もきわめて似通っているのだろうと想像してしまえそうな集団なのです。

これがたとえばシンガポールの会社だと、同じ部長の集団であっても、性別も年齢も、国籍も宗教も、まさに多様性に満ちているのが普通です。
シンガポールはもともと多民族、多宗教の国家ですから、当たり前と言えば当たり前なのですが、そもそもグローバル企業というのはそういう存在なのです。

ビジネスに直接影響を及ぼすのは、もちろん外見ではありません。
しかし、外見や属性上の共通性が同時に中身の同質性に通じているケースは少なくないと思われます。
中身の同質性とは、言い換えれば“会社人”という理解を共有している集団であるということです。
そして、この理解の共有がダイバーシティを受け入れ難くしている、という可能性が捨てきれないのです。

それだけではありません。多様性は受け入れるだけでは不十分なのです。
もし、多様性を積極的に生かすことができないとするならば、やはり企業にとってそのことの代償は非常に大きいものがあるからです。

日本も高度成長の頃はダイバーシティなど特に議論にはならなかったのだと思います。
余分なことを考えず、異論を排し、ただひたすら指示に従ってまい進する同質集団のほうが、むしろ強みを発揮し得た時代だったからです。
そうした時代には、多様性などという要素は、そもそも問題になる余地すらなかっただろうと思われるのです。

しかし、時代は変わりました。
変化に満ち、市場も社会も成熟し、簡単にはモノが売れない今日、もう一方では人材も不足していくこの時代を生き抜こうというとき、日本企業の多様性のなさ、画一性は、環境変化に対する対応力に欠けていることを意味しているのです。

残念ながら、今という時代のビジネスは20年前世代、10年前世代の成功体験が通用しない時代です。
まったく予測のつかない環境変化に対応していくためには、多様な立場や経験や能力が不可欠です。
今までにない複雑な問題を解決していくためには、多様な視点や知恵やアイデアが必要だからです。

それにも関わらず、昔ながらの規律や格式を重視し、指示に対して忠実に動く組織、没個性的な人材ばかりを良しとしていたのでは、環境変化に対応していく集団としての柔軟性や可能性が望めないのは明らかです。
とくにグローバルな競争関係の中では、こうした硬直性をそのままにしておくと、日本企業が決定的に不利な状況に置かれることは明白です。

海外現地法人の現地化が進まない、日本企業の手がける海外M&Aの成功確率がきわめて低い、優秀なプロパー社員、多国籍社員を採れない。
異質な人材の能力や経験を生かせない、女性の役員や管理職が増えない、といった問題がなかなか解決されないのも、そうした背景があるからなのです。


多様性とは真逆の「固定化した価値観」という障壁

現状、ほとんどの日本企業で人材の多様性が(他の先進諸国と比較して)乏しいことは疑いようのない事実です。たまたま多様性がないだけならまだしもなのですが、そもそも多様性を受け入れることができないことが原因で今のような状況に陥っているとすれば、問題はかなり深刻です。

“多様性を受け入れることができない”というのは“多様な価値を受け止めることができない”ことを意味しています。もっといえば、どんな人間であってもその「あるがまま」をリスペクトしてまず受け止めよう、という姿勢を持てないということです。

物事をあるがままに受け止める、というスタンスが取りにくくなるのは、価値判断の基準が固定している場合です。
そして、私たち日本人の価値判断の基準は歴史的に見ても、かなり固定的であると言わざるを得ないのです。

なぜ私たち日本人の価値判断の基準は固定してきた、と言えるのか。
これまでのコラムでも何度か述べてきたように、日本の社会はその歴史から見て、格式や序列意識が重要な意味を持ってきた社会だからです。


▼日本の組織を深部で動かす「武士道」の美意識(前・後編)
 ~忠義のタテマエが思考・行動の自由を奪う
 http://www.scholar.co.jp/column/detail.php?id=331


さかのぼって、江戸時代の支配層である武士が堅持してきたストイックに忠義を守り抜くという価値観は、明治維新を経て、今もなお私たちの中に一種の社会通念として息づいています。
武士道にも由来するこうした価値観の中核を占めているのが忠義であり、格式を重んじ、序列意識を大切にする、という肌にしみ込んだ感覚なのです。

格式を重んじる、という美意識の伝統は、“上司にお仕えする”という今も当たり前に使われる言葉が示しているように、序列意識を根深く日本社会に浸透させることにつながっています。
このような上司部下の関係は、「わかりにくいコトを、問い返す」という当たり前の行為すら躊躇させてしまう人間関係なのです。

諸外国と比べて、序列意識を人間関係の中に持ち込むことが多いのは日本人社会の特性です。
これはルールがあるからではなく、社会通念として一種の戒律のように無意識のうちに根付いている意識です。

このような、「格式」という固定した価値基準を社会通念として持つ日本人の特性は、ダイバーシティとは真逆の性向であると言えます。
前に述べたように、格式を重んずるという柔軟性を欠いた固定的な価値観を持っていればいるほど、“あるがまま”の多様性を受け止めることは難しくなるのです。
ましてや、本心で開示したり受け入れたりすることなどできません。

しかし、世の中の流れはダイバーシティを価値判断の基準にせざるを得ない方向に動いています。
さらには、価値を置くだけではなく、より積極的に “多様性を一体として生かす”方向へと深化しているのです。


集団がつくり出す壁は、集団で一緒に直視して取り除く

多くの企業が根深い固定化した価値観に縛られている現実を“現在地”とするなら、どのようにしてそこから抜け出すことができるのでしょうか。

第一には、日本人が当たり前のように共有している社会通念、○年次、○○大卒、と社員に符号をつけるような格式意識を、チームで自覚的に認識すること。
それによって生じている組織・仕事上の問題点をみんなで出し合い、顕在化することです。
そのプロセスの中で、個々が組織の日常において暗黙的に従っている規範や価値観に自ら気づくことで、その壁を乗り越えていくのです。

この壁は、一人ひとりの認識の問題でありながらも、組織という集団社会に働く同調圧力が生み出しているものです。
そういう意味では、個人がしっかり自覚することとあわせて、周りの人たちと一緒に壁の存在を認識し、集団で認識とその言語を共有することが克服のポイントになります。

もうひとつは、上司の発言に対して、不明なことは積極的に「問い返す」という基本動作が日常的に行なわれやすくなるような環境をつくっていくことです。
格式、礼儀にとらわれず、あるがままを受け入れ、わからなければ問い返すという習慣を身につけることが、初歩的でかつ基本的なダイバーシティの実践につながります。

次から次へと課せられる社会的な課題を、ただきれいごと、スローガンとして空虚に繰り返すだけで終わらせてはなりません。
日本人が持つ伝統的な価値観を整理し、時代に通用する強みに変えて新しい世界に踏み出していくことが必要なのです。
ダイバーシティは単なる対応課題ではありません。問題の本質と向き合う、私たちの姿勢と決断が求められているテーマなのです。

著者プロフィール

柴田 昌治

柴田 昌治

MASAHARU SHIBATA

80年代後半から企業風土・体質改革のコンサルティングに取り組む。 変化を妨げている価値観を変えながら変革のプロセスをつくり込んでいく「プロセスデザイン」というやり方が特徴。

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