この自然の摂理ともいえる「変化」は、その後800年たった今も同じように起こり続けています。ただ、一つ違うことがあるとしたなら、「VUCA」という言葉が使われるように、予測不可能なほどにスピードが早まり続けていること、そして、周知のとおりその変化のスピードが、企業などの組織に多大な影響を与えているということでしょうか?

しかし、どれだけ時代が変わり、変化のスピードが変わろうとも、変化に対して私たちがとりうる選択肢は太古の昔より実は2つしかありません。それは、そのまま変化に「ただ流される」か、もしくは変化に対応するべく「自ら変わろうとする」か。

変革のストーリーは「一歩」からはじまる

私たちがこれまでの変革支援において、ずっと大切にしてきたことは、一貫して「自ら変わろうとする」を選択した人の思いに寄り添い支援するということでした。

なぜなら、「自ら変わろうとする」選択こそ、社会や会社、組織を進化させる唯一の主体的な選択であること、そして、その一方で、その選択が大きな困難や痛みを伴うことだと知っていたからです。

「自ら変わろうとする」には、まず「一歩」を踏み出す必要があります。幕末の志士がそうであったように、「一歩」を踏み出す人がいるからこそ、変革のストーリーは始まるのです。

しかし、この「一歩」も決して簡単ではありません。どのように踏み出せばいいのかわからない場合もあります。「会社を変えようとして、上司や同僚に声をかけた」など、思い切って踏み出してみたものの、うまくいかずに悩み苦しんでしまう人もいるでしょう。

「会社が変わらないと倒産してしまう。でも、社員はわかってくれない」と社員を批判してしまう経営者。「会社は何をやっているんだろうか?そんな経営者なんかやめてしまえ」と経営を批判してしまう社員。会社のなかでよく見かけるであろうシーンです。現実は批判では何もよくなりません。しかし、そうせざるを得ない“もどかしさ”の裏返しであることも多いのです。

なぜそんな状況になってしまうのか。大きな要因に「現状維持バイアス」の強さがあります。確かに変わらないといけないとは思っていても、今の仕事・生活を変えることへの不安、与えられた仕事をしっかりこなす責任感、そんな思いから結局は昨日と同じ今日を送ってしまっている。そういう「現状維持バイアス」たちの前で、組織の中にある「自ら変わろう」というエネルギーは消耗していってしまうのです。そして、みんなが「変わらなければ」と思う頃には、すでに変化の波に追い付けないような苦しい状態に陥ってしまっている、――私たちは、そんな会社を多く見てきました。

「一歩」を踏み出そうとする人を応援する環境の大切さ

ですから、私たちの支援の最初の定石は、一歩踏み出した人を決して一人にしないことです。「名将の陰に名参謀あり」といわれますが、何かをやろうとするとき、それを理解してくれる仲間の存在はとても重要です。私たちは、職場の仲間とそんな思いを話し合ったり、同じ思いを持つほかの誰かとつながる場づくりなど、「一歩」を踏み出そうとする人を応援する環境を整えるところから始めていくのです。

来る11月20日は「組織風土の日」です。
この日は年に一度、自分たちの会社や組織について一度立ち止まって考える日です。みなさんの会社でも、深く話してさえみれば、一人じゃない安心感さえあれば、現状に問題を感じ変えていこうと立ち上がる多くの仲間がいることに気づくはずです。ぜひ、そういう思いを見い出しつないでいくためにも、一度、みなさんで話し合ってみる、そんな一日にしてみてはいかがでしょうか。