社員の「本音」が経営者に与えるメリットとは? <br/>~組織が有機的な創造体に変わるプロセス|コラム|スコラ・コンサルト
社員の「本音」が経営者に与えるメリットとは? <br/>~組織が有機的な創造体に変わるプロセス

社員の「本音」が経営者に与えるメリットとは?
~組織が有機的な創造体に変わるプロセス

高木 穣 | 2019.11.14

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社員の「本音」が経営者に与えるメリットとは? <br/>~組織が有機的な創造体に変わるプロセス

最近、支援先の経営者から「社員が思うように動いてくれない」という悩みを打ち明けられることが増えてきました。

どのように動いてほしいのかを聞くと、みなさんそろって部下への不満を並べ、「なにがなんでも目標を達成するというがんばりを見せてほしい」とおっしゃいます。つまり、“気合と根性”が足りないと考えているわけです。業績が思うように上がらない焦りもあるのでしょう。

たしかに、“気合と根性”が重視されていた時代はあります。昭和の高度成長期や平成初期のバブル期などで結果が出たため、働く人が持つべきマインドとして定着してしまったのでしょう。

しかし、私はこれまでの経験から、“気合と根性”が業績向上に有効だとは思えません。むしろ組織を硬直化させ、価値創造をさまたげる原因だとすら感じます。なによりも、部下を鼓舞しているはずの経営者自身が苦しんでいる様子をたくさん見てきました。なぜそんなことになってしまうのか、事例を踏まえて説明していきましょう。



重圧を抱える経営者の「気持ちがラクに」なった経緯



あるカーディーラーの経営者は、部下である店長たちへの不満でいっぱいでした。「なぜ、もっとがんばらないのか」と本気で考え、悩んでいたのです。

一方で、部下である店長たちは、経営者をおそれていました。どうやら、部下を激励するというよりは、怒りを爆発させることが多かったようです。キレる上司に立ち向かえる部下はそういません。なにもいえないほど萎縮させてしまえば、部下にどれだけ能力があったとしても、それを生かすことはできません。

そこで、経営者には「しばらく店長たちに口を出さないでください」とお願いしました。そして、店長たちだけのオフサイトミーティングをおこなったのです。経営者をおそれて口が重かった店長たちですが、「口を出さないと約束してくれたので、今だったらなんでもいえますし、なんでもできますよ」と水を向けると、どんどん思いのたけを吐き出してくれたのです。

おもしろいもので、最初は経営者の悪口ばかりが飛び出しますが、それが出尽くしてしまうと前向きな意見が出てきます。それでも「またいつキレるかわからない」と経営者に対して半信半疑だった店長たちですが、本当になにもいってこないので「じゃあやってみよう」と主体的に動くようになり、業績も向上しました。

では、その様子を黙って見守っていた経営者はどうなったのでしょうか。驚くことに、「とても気持ちがラクになった」と打ち明けてくれたのです。


「ない前提」の思考が組織を硬直化させる


この経営者の気持ちを分析してみましょう。彼は、怒鳴らなければ部下が動かないと思い込んでいました。しかし、怒鳴るのは自分にもストレスがかかります。そして、怒鳴っても「動いてくれない」といういらだちが、さらに自分をむしばんでいったのです。

加えて、業績に対するプレッシャーも相当なものでした。この経営者は業績を向上させるには“気合と根性”しかないと考えていたため、部下である店長たちにもそれを要求しました。しかし、キレながらそれを強要したため、店長たちはただヒステリックに怒鳴られているとしか思えず、萎縮してしまいます。実際は「動けなかった」のに、経営者には「動いてくれない」と見えてしまう。必然的に、組織は硬直化していきます。

この構造の根底には、「ない」を前提とする思考があります。問題点や欠点を見つけ、それを克服させるのが上司の役目だと考えているわけです。これは、多くの企業人が陥りがちな思考です。しかし、人間は機械や部品ではありませんから、思いどおりに動くと考えるほうがそもそも不自然です。一人ひとり異なる特性や意思が「ある」わけですから、本来はその「ある」をいかに生かすかが、上司の役目であるはずなのです。


10回以上の転職を経てたどりついた真実



「ない」を前提とした思考で、機械や部品のように部下をあつかう組織は決して少なくありません。上司自身はそう思っていなくても、実態がそうなってしまっているケースは多いのです。

実は、私自身も同様の経験をしてきました。私は10回以上転職を経験していますが、ある会社では、社長が「心を大切に、社員を大切に」と繰り返していたにもかかわらず、何人もの社員が追い込まれて失踪していました。ついには、私の上司が自殺してしまったほどです。衝撃を受けたのは、自殺の事実よりも、社長が新聞をチェックして「よかった、バレていない」と笑ったことです。おそらくその社長は、会社を守ろうという意識が強かったのでしょうが、「人を機械や部品のように扱わないと守れない組織とは何なのだろうか」と思わずにはいられませんでした。

ならば、組織を変える仕事をしようと思い、人事制度や評価制度を開発するコンサルティング会社に入りましたが、ここで迷いは深くなります。同じ精度を導入しても、うまくいく会社といかない会社があるのです。なぜだろうとつぶさに見ると、うまくいっている会社は制度を柔軟に運用していることに気づきました。上司が、マネジメントに役立つ部分だけを切り取って使っているのです。逆にうまくいかない会社は、「使えと指示されたから使う」という上司の受け身の姿勢が目立ちました。

つまり、「制度を使えばうまくいく」のではなく「使う人がどうあるのか」が大切だということがわかったのです。そんなときに出会ったのがスコラ・コンサルトでした。


本音で話すだけなのに、どんな制度よりも元気に



スコラ・コンサルトに入社したのは、組織の中に入り込んで、その風土を変えるアプローチをしているからです。しかし、その最大の特徴であるオフサイトミーティングには、正直なところ戸惑いがありました。

「気楽にまじめな話をする場」として設定されているオフサイトミーティングは、簡単にいえば思っていることを話すだけです。最短で3時間、長ければ1泊2日の日程で取り組むこともあります。私は、すでに2社でコンサルタントとしての経験を積んできましたから、「ただ話すだけでどんな効果があるの?」と懐疑的でした。

ところが、実際にオフサイトミーティングが終わると、参加した人たちが明らかに元気になっているのです。精緻につくりあげた人事評価制度よりも、雑談のほうが効果を発揮するとはどういうことだろうと思いました。自分なりに分析をしてわかったのは、「人は本音で話すと元気になる」ということです。通常、人は建前で話すことがほとんどですから、意外と機会がない「本音で話すことを聞いてもらう場」を設けることが、組織を変えることにつながると気づいたのです。


「共感」をベースとしたコミュニケーションに感じた新鮮さ



その気づきが確信となったのは、組織風土が変革されていく様子を目の当たりにしたからです。たとえば、ある保険会社の支店は、メンタル不調者が恒常的に出ていることが課題でした。支店内で対策プロジェクトを立ち上げたそうですが、うまくいかなかったそうです。「いつまで経っても結果が出ないから、解散させました」と支店長は怒っていました。

では、まず社員を集めてオフサイトミーティングをしましょうと提案して、支店を訪問したところ、現場を統括している営業所長が私を呼び止めてこう告げたのです。

「私は、スコラ・コンサルトが現場に入ることを認めていません。本日のミーティングも私が仕切ります」

現場と支店長の間に対立構造があることは明らかです。冒頭でご紹介したカーディーラーの事例とは少し違いますが、組織が硬直化している点は共通しています。オフサイトミーティングは「話しやすく考えやすい」環境をつくる必要がありますので、仕切りを拒否されたのはこまりましたが、自己紹介のときに私自身の本音を伝えることで、同じような雰囲気をつくろうとしました。結果的にオフサイトミーティングのような場にすることができましたが、そうするとやはり会社に対する愚痴や不満が噴出したのです。

興味深いのは、社員がそれぞれ愚痴や不満を吐き出すことによって、「共感」が生まれたことです。それまで、お互いに「本音」をぶつけあうことがなかったのでしょう。「共感」をベースにしたコミュニケーションに新鮮さを感じてくれたのです。最初は拒絶した営業所長も「こういうミーティングはいいね」といってくれて、オフサイトミーティングをつづけることにしました。


女性社員の涙の訴えから「共創」が生まれ、社内の雰囲気が激変



冒頭のカーディーラーの事例と同様で、愚痴や不満が尽きると前向きな話が出てくるようになります。何度目かのオフサイトミーティングのとき、ある女性社員が「感謝される仕事がしたいんです!」と涙ながらに訴えたのです。これが、その場にいた全員を揺り動かしました。この支店では、顧客に感謝されることがほとんどなかったようで、「まず社内から『ありがとう』を増やそう」ということになったのです。「共感」から「共創」が生み出された瞬間でした。

当初は「『ありがとう』が見つからない」と苦戦していました。人に感謝をするには、よく相手を見る必要があるからです。でも、制度として組織からあてがわれたものではなく、自分たちで主体的に生み出した取り組みであるため、「どうしたら『ありがとう』ができるか」を工夫することができたのです。

そうやってどんどん組織風土が変わっていったのを最初に気づいたのは、メンタル不調で休職していた社員でした。復職したとき、明らかに雰囲気が良くなっていたそうです。今ではメンタル不調者がゼロになり、それまでは産休・育休取得後に退職する女性社員がほとんどだったのが、全員復職するようになりました。


「固定観念」からの解放が、組織の質を向上させる


この保険会社の事例も、冒頭のカーディーラーの事例も、社員の主体性を促した最大の要因は、経営者(上司)が黙って見守ったことにあります。黙って見守ることが手法として優れているのではなく、部下が主体的に動けるように促したことが重要です。黙っていたわけですが、ある意味では部下との間に本質的な対話が成立したともいえるのです。結果、部下は生き生きと働けるようになり、経営者も気持ちが楽になりました。

「細かく口出ししなければ部下は動かない」と考える人もいるかもしれませんが、それは「部下を動かすには細かく口出しをするべき」という固定観念にしばられている状態ともいえます。思い切って、そういった「経営者はかくあるべき」という固定観念から自分を開放し、「本音」の経営をめざしてみませんか?

そのためにも、ぜひオフサイトミーティングで部下の「本音を引き出す」ことの効用を経験してみてください。本音を「共有」することで「共感」が生まれ、価値創造に欠かせない「共創」へと変化するプロセスを目の当たりにした瞬間、すでにあなたの組織は有機的な創造体へと生まれ変わり、全員が生き生きと働けるようになっているはずです。そして、真の意味で自分らしい経営ができるようになったことに、きっと驚くのではないでしょうか。

著者プロフィール

高木 穣

高木 穣

YUTAKA TAKAKI

組織変革への重要なファクターである、”場”づくりのプロフェッショナル。その技はスコラの中でもトップクラス。“場”の空気を読んだ振る舞いで”安心感”を醸成し、互いに自然体で話し合える”場”を創り出す。

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