〈人と行動をつなぐ技術〉 <br/>自ら動く「当事者」を増やすには|コラム|スコラ・コンサルト
〈人と行動をつなぐ技術〉 <br/>自ら動く「当事者」を増やすには

〈人と行動をつなぐ技術〉
自ら動く「当事者」を増やすには

三好 博幸 | 2019.11.28

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〈人と行動をつなぐ技術〉 <br/>自ら動く「当事者」を増やすには

「積極的に提案したり、チャレンジする者が出てこない」
「評論家ばかりで、自ら動く当事者が不在」
「言われなければ動かない指示待ち社員が多い」
そんな嘆きの声がいまだに多くの企業で聞かれます。

平成の時代には、「個の自立」「個人の主体性」「当事者意識」などの言葉がどの企業でも標榜されてきました。研修や啓発の努力もそれなりにされています。しかし、いまだに同じようなことが言われ続けているのはなぜでしょうか。


本気の「当事者」が出てこない理由



バブル崩壊以降、「個の自立」や「個人の主体性」といった言葉が、昭和型の手厚い福利厚生施策を見直すための方便として使われてきたことは否めません。そのため、当の「個の自立」や「個人の主体性」を育むことへの取り組みが真剣になされてきたかというと、必ずしもそうではありませんでした。また、取り組んでいたとしても、それを「個人の意識の持ち方」の問題としてとらえ、主体性研修やモチベーション研修を行なうというアプローチが中心になっています。

研修を通じて一人ひとりに刺激を加え、個々人のものの見方に変化を与える。また、上司やマネジャーが部下に対するコミュニケーションのとり方を変えることによって、部下のモチベーションを引き出す。もちろん、そうしたやり方にも一定の効果はあります。しかし、その効果は長続きしません。日常の仕事の場に戻ると、研修の場での高揚感も冷めていき、高まったはずのモチベーションも下がってきます。

個人の自律性や当事者意識というものは、人から「持て」と言われて芽生えるものではありません。強制的に持たされるものではなく、内発的に湧いてくるものです。

たとえば、上司から「この件について、君は当事者意識を持ってやっているのか?」と言われて、「いいえ」と答える部下はいないでしょう。では、自らの意思で自分なりに考えてコトにあたっているのかというと、指示されたからやっている、というのが本音です。でも、そうとは言えない立場ですから、通常は建前上「はい」と答えてしまうのです。

建前に支配された組織では、「チャレンジ」「主体性」「当事者意識」といった言葉までもが、じつは“建前論”としてとらえられています。

大事だと言われていることを真に受けて動いてみたら、実際の組織には「出る杭は打たれる」「横やりが入る」「孤立無援になる」といった危険性が蔓延していて、前向きな人間であっても動きようがない、という現実があるのです。


「当事者」が生まれる6つの条件



では、建前ではない本音ベースの当事者意識は、どうすれば生まれるのでしょうか。社員が当事者意識を持つためには「当事者になれる条件」が必要です。

これまで多くの組織は、社員の当事者意識を育てようとして、個人に対する働きかけのみに着目してきました。しかし、個人へのアプローチだけでは当事者意識は育ちません。それとセットで、環境条件の整備が欠かせないのです。

私たちは、これまで社員の主体性と自律的な行動による組織変革を進めてきました。その経験則でいえば、自ら動く当事者が生まれる条件は大きく6つあります。

1)内発的な行動エネルギーを引き出す機会
2)協力してくれる人のつながり
3)共通の目的と自分の役割のつながり
4)「行けそう!」感覚を持つ
5)個人を縛る制約をはずす
6)安心して動ける環境(セーフティネット構造)

この6つの条件の大部分がクリアされると、もともと自律性が高く意欲的な人間であれば、主体的に新たな行動を起こし始めます。

しかし、一方で、それでもまだ一歩を踏み出せない「潜在的な当事者」は大勢います。
この人たちが動き出せないのはなぜでしょうか。


とにかく時間と余裕がない!


「潜在的な当事者」が一歩を踏み出せない理由として最も多く挙がるのが、「現状を見直したり、新たなことを試みたりする時間と余裕がない」という問題です。いくら「チャレンジせよ」と言っても、さばかなくてはならない仕事を山のように抱え込んでいる「さばく化」した組織では、メンバーが自分たちで時間をコントロールすることができなくなっています。

たとえば、有名な3M社の「15%ルール」のように、ルールを持ち込んで新しいことを考えたり、挑戦したりする時間を確保しようというケースがあります。
しかし、仕事をさばくだけで精一杯の職場にそのままルールだけを持ち込んでも、15%分の仕事がシワ寄せされて残業や休日出勤にズレ込むだけで、むしろ負担が大きくなって、うまくいかないことが多いものです。自分が苦しくなることがわかっているとしたら、誰しも新たなチャレンジには二の足を踏んでしまうでしょう。

何事も新たなコトを起こそうとする時には、まず元手が必要になります。新たな試みのためのアイデアを交わし、今までとは違う動きをするためには、やはり時間という資本が必要なのです。


「目的」の不明確な仕事を見直し、自分たちで時間をつくる


さばく化した組織に時間資本を生み出すためには、「仕事の仕分け」が威力を発揮します。

仮に、現状の職場で「15%ルール」を試みようとするなら、まず15%の仕事を減らさなければなりません。
そこで、「目的と意味」を判断軸として、目的が不明確な仕事、今日的な意味を失っている仕事を廃止し、目的とずれた仕事や効果性の低い仕事はやり方を見直していく。「仕事の仕分け」は、過去からの堆積で肥大化した仕事を目的合理的にスリム化する手法です。

よく「時間は自分でつくるもの」と言われますが、さばく化した組織で一歩を踏み出せない人たちにとって、「自分一人」で余裕時間を捻出するのは容易なことではありません。自分一人では手がつけられないから、職場の人たちと一緒に、「仕事の仕分け」を通じて「自分たち」で時間をつくるのです。

時間の元手が確保できれば、あらためて、これからの自分たちにとって本当に必要なことは何かを考え、アイデアを交わし、チャレンジをする余裕が生まれます。

今まで、さばく化した組織に貼りつき状態だった社員が、外に飛び出し、外部の情報や異質な文化に触れ、視野を広げたり、触発を受けたりして、新たなイノベーションのタネを持ち込むこともできるようになります。

このような当事者のオープンな思考や行動を歓迎し、それを物心両面で後押しする組織の環境が、チャレンジする文化をつくるのです。


(本コラムはプロセスデザイナーの著書から転載・編集したものです)
『組織をつくる技術』(三好博幸著)より

著者プロフィール

三好 博幸

三好 博幸

HIROYUKI MIYOSHI

体質問題を、「風土・体質=組織のソフトウェア」という観点から構造化し、大組織の変革をシステマティックに展開していくアプローチの開発に取り組む。

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