「変わる組織」と「変わらない組織」を分けるもの|コラム|スコラ・コンサルト
「変わる組織」と「変わらない組織」を分けるもの

「変わる組織」と「変わらない組織」を分けるもの

辰巳 和正 | 2019.12.25

  • Facebook
  • Twitter
「変わる組織」と「変わらない組織」を分けるもの

最近よく目にする「VUCA」という言葉は予測不可能な時代環境を意味しています。「今日の正解は明日の不正解」となりうる時代ですから、まさに令和の時代を象徴する言葉と言えます。

たしかに、ここ数年「環境変化に自律的に対応する組織づくり」を経営課題に明記する企業が格段に増えてきたと感じています。「組織開発」という考え方が多くの会社で取り上げられてきているのも、企業が変化に対応するためのカギが「人の集まりとしての組織のありよう」にあると認識されているからでしょう。

今日の企業が求める「組織の力やプロセス」は、かつてのように機械的、工業的なものではなく、変化・成長する人の特質を最大限に生かしたダイナミックで生成的なものです。つまり、それは形式・形態としての組織ではなく、人々のよきありようがつくり出す発展的でいきいきとした環境なのです。

だからこそ、また新たな課題も浮上しています。

・「変わらなければならないと言っているのに、みんな目の前の仕事をこなしているだけ」
・「変われ!という経営のほうこそ、本当に大切な問題に向き合っていない。まず経営側から姿勢を見せてほしい」
・「風土改革だ、組織開発だというわりには、実感できる変化が何もない」

長年にわたって「変われない」あきらめ状態が続いてきましたが、今後はさらにそれが深刻な問題になっていきます。

企業が環境変化に自律的に対応していくためには、そこにいる人たちが「自ら組織を変え続ける努力をする」ことを抜きにしては考えられません。その必要性が理解されてきたからこそ、対話やビジョンを重視するなど、人を通じて組織を変えるプロセスが意識されるようになってきたのです。

VUCAの時代を前提に「自ら変わり続ける組織になる」ことを重要な経営課題と考えるなら、それを掛け声だけで終わらせるわけにはいきません。
現実に変えていく手立てやプロセスを持てるかどうかが、これから問われるべき焦点になっていきます。


現実認識を誤ると、改革のボタンを掛け違うことに



組織を変えるための取り組みを考えるとき、通常はどうしても、まず「どうやれば、組織は変えられるのか?」という手法のほうに意識が向いて、手段の選択から始まることが多いように思います。

しかし、今まで多くの会社の組織変革に関わってきたなかで確信をもって言えることは、「変わっていく組織」と「変わらない組織」の差は、採択する方法の差ではありません。まず取り組みのオーナーや推進リーダーがその前提となる「組織を変える」ことや「組織」というものの実体や現実をどう認識しているか、その現実認識の差が結果に大きく影響しているのです。

【現実認識】「組織全体を一律一斉に変えることは不可能である」という認識を正しく持っているかどうか?

組織を変えることが難しいのは「全体を変えるのがたいへん」だからではありません。本来、組織は「人の集団」ですから、トップの号令で機械的に変えるというわけにはいきません。たとえ部分的にであっても、実質的に組織を変えるためには「現状を変えようという人(=当事者)の大きなエネルギー」が必要です。本当に難しいのは、この当事者を顕在化して、そのエネルギーを引き出すことなのです。

そもそも組織において、「職場や日々の仕事を自分の手でもっと良くしていきたい」と本気で思っている人は意外と少ないものです。

現実には、現状を変えることに前向きな人が2割ぐらい、そのなかでも本当に強い思いを持って主体的に行動を起こす人(=当事者)となると、さらにその2割程度。全体では数%にすぎません。8割以上は、不満はあっても変化より現状維持のほうに流れていく“現状維持バイアス”が勝っているというのが一般的な傾向です。この現状維持バイアスの強い組織の実態を、取り組みをリードする人間が正しく理解せずに組織変革を進めようとしても決してうまくはいきません。

つまり、自組織のなかに変化の担い手を見つけ、そのわずかな変革当事者のエネルギーで現状維持バイアスの強い組織を変化させていくというのは、計画どおりに進まないという意味でも簡単ではないのです。


貴重なエネルギーを減退させる「一律一斉」の全社アプローチ



よくある組織変革の取り組み例として「全社で一律一斉に展開する」という全社アプローチがあります。そういうアプローチであっても、意思ある2割の変革当事者は反応して動き始めます。

しかし、一律一斉に全体で等しくやることを重視する活動の場合、会社は、変わろうと動き出す2割でなく、変わることに関心の薄い8割を引き上げていくことにエネルギーを注ぎがちです。経営者のメッセージを何度も出したり、活動推進事務局を設置して文化醸成のためのミーティングを展開したり、朝礼や面談などで個別アプローチをしていくことも多いでしょう。

ただし、その一方で、日常で皆が実感している組織の問題に切り込もうとする改革の気配がなければ、変わろうとして発言し動き出した2割も、その意欲をくじかれ、あきらめ感をもってしまいかねません。

本気で組織を変えようとするなら“変わろうとする人は2割以下”という現実認識に立ち、その2割でどうやって組織を変えていけばいいのかと発想を転換することが求められるのです。

一律一斉にやらない、やりたい人の自発的なエネルギーを組織する。結果を固定せず、変化する現実に即したプロセスをデザインしながらめざすものに近づいていく。この方法論のパラダイム転換で、意思ある当事者をネットワークして変革のエネルギーを高めていくやり方はスコラ式の特徴でもあります。たとえば、腸内環境を改善するアプローチなどはイメージとして参考になるでしょう。

健康的な腸内細菌のバランスは、自然の法則では、善玉菌2割:悪玉菌1割:日和見菌7割と言われています。その腸内環境を良くするアプローチは、悪玉菌を排除することではありません。とにかく善玉菌2割の優勢を維持することに集中し、日和見菌の7割を引き寄せて善玉化させるというやり方です。

つまり、現実を正しく認識することで、終わりのない短所是正よりも潜在するエネルギーや強みにフォーカスするという発想が見えてくる。そこで、はじめて効果的な変革の戦略が立てられるのです。


「組織開発」はVUCAな時代の新たな戦略領域



自らを変化させることで環境変化に対応していく組織をつくることは、VUCAな時代に経営を持続させていくための重要な経営課題になっています。これはどの企業にとっても、あらかじめ答えを持てない不確実性の高い課題といえます。それだけに経営が本気でコミットしなければ、すぐに形骸化してしまうものでもあります。

もしも長期的な視点を持って「自ら変わり続ける組織になろう」という難易度の高い選択をするとしたら、従来の研究開発やシステム開発などと同じように「組織開発」という新たな戦略領域にもまた、経営資源を投じていく優先順位づけが必要です。

それに加えて、経営も単に「予算配分をする」だけではなく、社員が自分たちの手で組織を変え続ける取り組みを支援すること。さらに、経営自身もまた組織の重要な一部として自己変革に挑戦することが、この難しい課題を推進していくための条件になります。

そして、こうした経験にない取り組みに関する意思決定そのものが、経営にしかできないチャレンジなのです。

先の見えない令和の時代はまだ始まったばかりです。不確実な状況に対して組織の変化対応力を高めることは、まさにこれからの企業の先行きを左右する重要なファクターになります。だからこそ支援側の私たちも、そのかなめとなる人の集まりと動き方の実態に、もっと今以上に迫っていかなければと思うのです。

著者プロフィール

辰巳 和正

辰巳 和正

KAZUMASA TATSUMI

大手金融会社管理職で組織変革の経験をもつ。2015年7月、スコラ・コンサルト代表取締役に就任。

関連コラム

RANKING

CATEGORY

PROCESS DESIGNER

ARCHIVE

組織の風土改革のご相談、
各種お申込みはこちら
CONTACT US

page top

メールニュース登録