内なる「調整文化」と対峙する2020年<br/> ~経営の手で組織ぐるみの「思考停止」を解除し<br/> 挑戦の気風と難局を打開する「考える力」が育つ文化を手に入れる|コラム|スコラ・コンサルト
内なる「調整文化」と対峙する2020年<br/>  ~経営の手で組織ぐるみの「思考停止」を解除し<br/> 挑戦の気風と難局を打開する「考える力」が育つ文化を手に入れる

内なる「調整文化」と対峙する2020年
~経営の手で組織ぐるみの「思考停止」を解除し
挑戦の気風と難局を打開する「考える力」が育つ文化を手に入れる

柴田 昌治 | 2020.01.16

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内なる「調整文化」と対峙する2020年<br/>  ~経営の手で組織ぐるみの「思考停止」を解除し<br/> 挑戦の気風と難局を打開する「考える力」が育つ文化を手に入れる

日本の組織で働くには「空気を読む」力が必要です。何かをするとき、何かが起こったとき、担当する人間が常識ある組織人なら“組織の意向”といった空気を意識します。そして、無意識のうちに自分なりの考えに基づく判断を避けようとするのです。

とりわけ外国企業との取引では、その傾向が際立ちます。日本企業側の“できる”責任者ほど、ことあるごとに「上司と相談します」「調整してお返事します」という決まり文句を口にするからです。個人がその場の判断や意思表示を避けて持ち帰るのが一般的なのです。外国企業(異文化)の人間は当初こそ戸惑うのですが、つき合っていくうちに、これは個々の担当者の資質の問題ではないと感じ始めます。日本企業に共通して見られる特有の仕事上の作法があることに気づくのです。

無意識ではあるけれど、確かに存在していて、組織人らしさを持った人間であればあるほど抗うことができない強固なもの。この“日本的な空気感”の正体が、日本社会が伝統的に引き継いできた「調整文化」です。

国際的にも異彩を放っている日本企業の調整文化は、組織を「思考停止」状態に追い込むことで平成の時代を“失われた30年”にしてしまった張本人です。その、目に見えない空気が支配してしまう現状を打破し、令和の時代こそ、希望をはらんだ挑戦の風が吹く組織にしていかなければなりません。

そのためには、まず序列の上位に位置する役員層や、それに続く本社スタッフ陣が率先して自分たちに「枠」をはめてきた調整文化と向き合い、新たな“経営としての意思”を示すことで「集団の考える力」を回復する必要があります。


経営の中枢で秩序を守る「調整文化の権化」



調整文化は、組織の安定を優先する「混乱回避」の強固な価値観に根ざしています。階層や役職、年功などの序列を絶対のものとする組織は、「上」に従い、それぞれが決められた立場、役割を守って規律正しく動くことで組織の安定を保ってきました。

調整文化を色濃く体現し「浸透役」として機能しているのが本社のスタッフ陣です。

会社の体面を守ること、組織を安定的に運営していくことなどを自らの使命とし、会社や上司に忠誠を尽くす、というのが本社スタッフの掲げるタテマエであり信条です。そこに貫かれているのは、歴代の先輩から受け継がれてきた作法であり、組織人としての身の処し方なのです。さらに、そこには先輩後輩関係にも見られるような“序列を大切にする”日本的な美意識が加わることで、タテマエと役割意識は強固なものになっていきます。本社スタッフは、いわば調整文化の化身として経営の中枢を担っているのです。

組織を安定的に運営していくために有効だったのは「予定調和」という思想であり、前例踏襲路線です。混乱を避け安全第一に物事を運ぶという伝統に基づくこの考え方で仕事を進めていれば、大きな失敗が起こるリスクを限りなく小さくできるからです。時代が変わり、外部環境が変化しても、本社スタッフが調整文化の価値観を貫くことができたのは、市場や顧客からは遠い場所で内部の仕事を企画・調整するスタッフというポジションにあったからです。

階層の上部で経営陣と直接つながり、全社に強い影響力を持つ本社スタッフがこうした調整文化に沿った仕事の進め方をすることで、必然的に組織全体が調整文化に染まってきたのです。

現地現物で仕事を回す現場が、現実と調整文化との隔たりや不具合をいくら指摘しても、強固な序列の構造を持つ組織の文化をボトムアップで変えることは不可能です。
特に、合理化が急速に推し進められた平成の時代には調整文化が圧倒的に優位を占めてきました。「本社スタッフ発の調整文化」と「現場が求める現地現物の文化」とのせめぎあいでは、本社の影響力の強さが勝ってしまうのです。


「思考停止の文化」では「考える力」が育たない



日本そして日本企業の将来にとって問題なのは、この調整文化が「思考停止の文化」になっている、という点です。

というのも、「予定調和」の考え方は“結論が最初から見えている”ことを意味します。最初から確定している結論に向かって、そこから逆算した道筋をただ辿っていく進め方であれば、深く考える必要性はありません。
「前例踏襲」も同じです。過去の経験をなぞって事を進めればいいのですから、そこでも考える必要性はないのです。つまり、調整文化というのは深く掘り下げる思考を必要としない、ということです。

自分で考えて問題を解くよりも、既知の公式に手っ取り早く答えを当てはめる。この無自覚な思考停止状態は、今の日本企業が抱える本質的で致命的な問題点です。

これからの日本や日本企業が切望しているのは、複雑で困難な局面に立ち向かっていく挑戦の姿勢であり、いくつもの壁を打開していくことができるタフな「考える力」です。しかし、経営の中枢にあるスタッフ部門は今まで通りのミッションで「混乱回避」を上位に置いて、前例踏襲で組織を動かし続けます。規律や作法が「枠」となって社員の思考や行動を縛る調整文化の影響が強い環境の中で、考える力が育つはずがないのです。

どうすれば調整文化のマイナスの影響を排除し、考える力が育つ環境を手に入れることができるのか、これが令和の時代の日本企業にとっては一番の問題です。

難局を打開し、未来を切り拓いていく「考える力」は、日本の教育では重視されてこなかった「すぐには答えの出ない問いに向き合い続ける」ことでしか培われないものです。そのためには“置かれた前提を無意識のうちに肯定”している「前例踏襲の価値観」を転換しなければなりません。
さらに、変化の激しい今の時代は、これまでの常識や前例を離れて「考え抜くことで答えを探っていく」創造的な思考を育てることと、決めるべきことをスピーディに決めて試行錯誤を展開する意思決定とを両立させていく必要があります。

経営を担う身にとって「考える力を育てる」ことは本質的に物事を理解することが要求される難問なのです。


組織の頂点から始まる転換 ~経営陣は「何に」努力すればいいのか

調整文化が大勢を占める現状の組織に、挑戦の気風と困難な状況を打開していく「考える力」が花開く文化を持ち込むことは容易ではありません。効果的なのは、影響力の大きい組織の頂点から変化に着手し、新たな規範となる価値観を吹き込んでいくトップダウンです。

これまで集団を縛っていた「枠」としての調整文化の価値観を、開放的な思考や挑戦を引き出す「軸」としての挑戦文化の価値観に塗り替えていく。これは部下に任せてできる仕事ではありません。これほどの難課題には、経営陣が一丸となって取り組むことが不可欠な条件になります。

しかし、これまでさんざん指摘されてきたように、経営陣が一丸となるのは簡単なことではありません。役員同士は個人的には親しくできても、経営の難しい課題に力を合わせて取り組む“チームとしての信頼関係を築く”ことは不可能だと思われてきました。互いに心を許すこともなく、相互不干渉の距離を保つことで並び立ってきた役員同士が果たして向き合えるのでしょうか。

救いなのは、役員は自分のことだけを考えている人たちではないことです。関心は確かに自分が管掌している部門にのみに注がれてはいますが、会社がどうなってもいいと思っているわけでは決してない。会社を大事に思う気持ちが、自部門でしっかり結果を出すという役割のほうに向けられていただけなのです。

役員がチームとして機能するためには、この“自部門の執行責任”という自ら定義した役割を“経営トップと共に会社の未来を築く”という役割定義へと昇華させることが必須です。それによってチームとしてのミッションと目的を共有することが条件になるのです。

加えて、役員のチームができるかどうかのカギを握るのは「心からの信頼関係」です。これまで役員同士で役割を棲み分け、暗黙の裡に結んできた相互不干渉条約を解消しなければなりません。そのために必要なのが、互いの胸の内を知り合うことです。日本人には、互いの心の内を知り合うことさえできれば心を許し合える文化的な素地があります。それを可能にするのが「心理的な安心感」の形成です。

組織の頂点にいる役員は、弱みを見せれば立場が危うい調整文化の中で今の地位に昇り詰めてきました。ということは、厚いガードで身を固めているということです。お互いの間に心理的な安心感がなければ、とうてい悩みやタブーを隠すことなく話し合うことは不可能です。逆にいえば、安全で安心な環境がつくられていくことで、互いの心の内を知ることさえできれば、急速に距離が縮まって信頼関係が生まれるのです。

役員が経営トップと同じ目線で重要な経営課題に向き合い、不可能と思われていた“チームになる”。こうした従来の調整文化では見られなかった転換の努力を見せることで、新たな文化の予感は全社に示されていきます。トップに立つ人間がこのような状態になってはじめて、調整文化の担い手だった本社スタッフも、挑戦の気風をはらむ新たな文化の波に洗われていく、という環境変化が起こり始めるのです。

経営が一丸となって打ち出す「挑戦の文化を浸透させる」という大方針が、タテマエではなく本気で受け止められるようになるのはこうした気運、空気感の変化が生まれるタイミングです。思考を停止していた組織の「考える力」は、そこからようやく目覚め始めるのです。

2020年を挑戦文化への大転換の一年にするために、皆さんと一緒に工夫を凝らしていきたいと思います。

著者プロフィール

柴田 昌治

柴田 昌治

MASAHARU SHIBATA

スコラ・コンサルト創業者。日本の組織を事実・実態に即して自らを変えることで新陳代謝していく組織に変える、日本的な変革の方法論〈プロセスデザイン〉を提唱している。

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