〈本音・事実で話し合う技術〉 <br/>~もの言えぬ組織を「言いたいことが言える組織」にする|コラム|スコラ・コンサルト
〈本音・事実で話し合う技術〉 <br/>~もの言えぬ組織を「言いたいことが言える組織」にする

〈本音・事実で話し合う技術〉
~もの言えぬ組織を「言いたいことが言える組織」にする

三好 博幸 | 2020.02.19

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〈本音・事実で話し合う技術〉 <br/>~もの言えぬ組織を「言いたいことが言える組織」にする

本音・事実の話をすることを阻む不安材料のうち、もっとも皆が恐れているのは「発言したことで不利益を受けないか」ということでしょう。

自分の発言が元で、上司から叱責を受ける、評価が下がる、同僚から非難されるといったバッシングだけでなく、よいアイデアを提供したつもりが、結局「お前が言い出したのだから、お前がやれ」と仕事と責任を押しつけられる、といったことに対する恐れです。

特に、日本企業に多い“もの言えぬ”ダークサイドの組織では「正直者がバカを見る」「言いだしっぺが損をする」「あとでハシゴを外される」といった負の教訓と、「余計なことは言わない」ことが生き残りの知恵として根づいています。そこに気づかず、「これからは自由にものを言ってくれ」とただ口約束で言われただけでは、誰も本当のことを話そうとはしないのです。

こうした発言の安全が保たれる環境をつくることは、十分な影響力や権限のある人が自ら動かさなくてはうまくいきません。したがって、これから述べることは、企業組織でいえば、経営トップやマネジメント層の人たちが意図してやるべきことになります。


セーフティネットをつくる



まず、安心して本音・事実の話ができる条件として、組織の中に「セーフティネット」構造をつくることが必要です。「セーフティネット」とは、最近ではよく目にする「心理的安全性」をカバーした幅広い概念です。
このセーフティネットは、個人回りでメンバー同士が協力してつくるセーフティネットと、トップや上司などマネジメントの側でつくるセーフティネットの二重構造になっています。トップやマネジメント層でつくるセーフティネットには、次の5つの要件があります。

(1)本音・事実重視の価値観を広げる
(2)まず、自分たちが体現する
(3)自由な話し合いの場の推奨
(4)発言の犯人探しをしない
(5)部下がまじめに話したことを受け止める

(1)本音・事実重視の価値観を広げる

組織の共通の価値観として、まずトップが「本音・事実を重視する」ことを打ち出し、その後はことあるごとにトップ、マネジメント層がその価値観を口にすることが必要です。
「factに基づけ」「違和感があれば口にしよう」「ウチは言いたいことを言う会社」など表現はさまざまですが、賢い企業では、こういう簡潔なワンワードを使って、日々の仕事の中で本音・事実重視の価値観をことあるごとに繰り返し伝え、地道に浸透させています。

(2)まず自分たちが体現する

「誰も社長に事実を伝えない」「役員同士がまともに話し合っていない」「上層部ほどお互いに言いたいことを言えていない」。多くの企業がこういった問題を抱えています。下の人間はトップやマネジメント層の姿をよく見ています。そして、その言動が本心からそう思っているのか、建前だけでそう言っているのかをじっくり観察しているのです。本気か建前かは、日々の行動が如実に物語ります。トップやマネジメント層が体現していない価値観など組織に浸透しません。逆に、トップやマネジャー自らが、まず本音・事実で話し合っている姿を見れば、下の人間も「これは本気だ」と思います。そして、そのことが「自分たちもやってもいいんだ」という安心感を生み出すのです。

(3)自由な話し合いの場の推奨

本音・事実を自由に話し合う場が組織内で公式に承認されたり、奨励されたりしていないと、場を設けることも参加することも難しくなります。特に、上司が場の意味を理解していない場合などは、「そんな話し合いをしてなんの意味があるんだ」「忙しいのに何をやっている」「不満分子の集まりか?」といったひと言が大きなプレッシャーになります。そういったことを回避するためにも、トップやマネジメント層が「まず自ら本音・事実で話し合う」ということを経験・実践する必要があります。その意味や必要性を肌身で感じられれば、部下にも同じようなことをしてもらいたいと思うようになります。

(4)発言の犯人探しをしない

ダークサイド組織では、批判的な意見や不都合な事実が出てきたときに「誰が言ったんだ」「そういうことを言いそうなのはあいつだろう」と発言の犯人探しが始まり、そして発言者が叱責や処分を受けるということがあります。そういう事例や経験が、本音・事実を個人の胸の奥深くに封印してしまうのです。そして言いたいことも言えぬダークサイド化がますます進みます。たまたま、誰か一人が批判的な意見や不都合な事実の話をしたとしても、じつはその背後にそういう発言をさせる真の要因があり、口には出さなかったものの同じ問題意識をもっている人間は大勢いるものです。
「誰が言ったか」ではなく、「どうしてそういう意見や話が出てくるのか」という背景にある事実に目を向けることこそ、事実重視の価値観を体現する姿勢なのです。

(5)部下がまじめに話したことを受け止める

本音・事実を重視する姿勢は、そこで出てきた意見や話をその後、どう扱うかということにも表れます。私たちが知る限り、常識的な人々が集まった一般的な企業では、本音や事実の話し合いの場があれば、会社や職場、仕事のしかたなどに関して、良識と良心に基づいたまじめな問題意識が出てくるものです。
しかし、せっかくそこで出てきた意見や問題意識、アイデアやこうしたいという意思が、無視されたり、放置されたりすれば、「結局、言ってもムダ」という負の学習につながってしまい、もう誰も本音・事実を言わなくなってしまいます。

「受け止める」ということは、「なんでもかんでも部下の要求を丸呑みせよ」ということではありません。もし、トップやマネジメント層でなければできないことであれば、自分たちで動きます。部下自身の力で解決できないことは、それができるようにサポートします。一緒にできることであれば、皆で協力して行動します。どうしてもできないことであれば「こういう理由でそれはできない」ということを皆が腹落ちするように説明すればいいのです。無視、放置、捨て置く、ということが最も不信感を招きます。自分たちがまじめに言ったことが受け止められている、尊重されている、何かにつながっているという実感が必要なのです。

ダークサイド組織の中に、オフサイトミーティングのような場を設け、そこで皆が安心して本音・事実の話し合いをするには、このようなトップやマネジメント層がつくるセーフティネットが必要です。それとメンバー同士でつくり上げるセーフティネットの二つが重なり合って働くようになった時、皆が本音・事実を自由に話し合う習慣が組織に根づいていくのです。

オフサイトミーティングの目的は、組織に本音・事実で話ができるスキルや習慣を根づかせることです。そのスキルや習慣が組織に根づいていけば、あえて特別な場を設けなくても、日常の中でオフサイトミーティング的な話し合いができるようになるでしょう。


(本コラムはプロセスデザイナーの著書から転載・編集したものです)
『組織をつくる技術』(三好博幸著)より
http://a04.hm-f.jp/cc.php?t=M1196129&c=44688&d=27f4

著者プロフィール

三好 博幸

三好 博幸

HIROYUKI MIYOSHI

体質問題を、「風土・体質=組織のソフトウェア」という観点から構造化し、大組織の変革をシステマティックに展開していくアプローチの開発に取り組む。

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