スコラ・コンサルトは、プロセス型コンサルティングによる組織風土改革のパイオニアです。

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株式会社ISOWA

 

段ボール製造機械の分野で国内トップブランドの株式会社ISOWAは、2001年に風土改革をスタート。

その取り組み、得られた成果について、同社の磯輪英之社長、取締役の中村淳ニさん、統括チーフの塩見俊也さんに聞きました。

 

■株式会社ISOWA
ISOWAは、1920年に創業した段ボールを製造する機械の専門メーカー。国内に5ヵ所の事業所と2ヵ所の工場、アメリカとドイツに営業・サービスを受け持つ現地法人があり、海外売上比率は30%。
国内単体の社員数は268名です。 ※2015年3月現在

■磯輪英之社長のプロフィール
1985年にISOWA入社。製造現場での研修、生産計画、営業、その後、人事も兼務した後、1997年に製造担当役員。2001年に社長に就任する。

 

ルールや制度では、本質的に人は変わらないと実感。

●風土改革に関心を寄せることになったそもそもの背景を教えてください。

ISOWAは私の祖父が1920年に創業した会社です。私は、この会社をもっといい会社にできれば幸せだなと思い、他の会社を5年ほど経験したのち1985年に入社しました。

入社当初から、社員たちを巻き込んださまざまなイベントや取り組みをスタートさせました。また、「ルールを変えれば会社が変わる」と考え、職務資格制度や、業績が好調な企業が導入していた制度などを導入しました。

しかし、受け身だった社員の姿勢や行動に変化は見られませんでした。自分がよかれと思ってやったことがまったく社員のためになっていないことに気がつき、社員が望まないことはもうやらない、と心に決めました。

 

「もう、これ以上の失敗はできない」と考えていた頃(1998年)、紹介されて読んだスコラ・コンサルトの柴田昌治さんの本で「風土改革」という言葉を知りました。

「ここに書いてあることは、今まで私がやってきたことと全然違う」「このような取り組みをすれば、人は変われるのか」と思い、挟んであった読者カードを出版社に送ったところ、スコラ・コンサルトから「著者を囲む会があるので、参加しませんか」と電話がかかってきたのです。これが私とスコラ・コンサルトの出会いでした。

 

社員から産声があがった、自発的な取り組み

●柴田さん、スコラ・コンサルトとの出会いからどんな展開になりましたか?

2001年、私が社長に就任した直後に行なわれた会社の80周年記念パーティで、柴田さんに講演をしていただきました。

役職や立場ではなく、ひとりの人間として、自分は仕事や会社をこうしていきたいんだという思いを出発点として対話し続ける風土をつくることが大事だといった主旨は、とても共感できるものでした。

 

●風土改革を具体的には、どんなかたちで導入したのですか?

私が先導したわけではないのです。柴田さんの講演を聴いたある若手社員から「社員同士で時間外に自由に話せる場をつくりたいのですが」という提案を受けました。

これはいわゆるオフサイトミーティング(以下、OSM)のことでしたが、当社では〈定時後ミーティング〉と称して、8名の有志が自分たちで話し合いを始めました。

その中から業務改善などの自主的な取り組みが出てきて、 “自分たちにも会社を変えていける!”という期待感が生まれたのです。

メンバーたちは夜遅くまでミーティングを続けていても、自分たちの意思でやっているので楽しいと言っていました。会社から「やりなさい」ではなく、当事者意識のある社員に思い切って任せること。これがISOWAのめざすべき方向性だと思いました。

 

● 〈定時後ミーティング〉は社内にどんなインパクトを与えたのでしょうか?

8人の社員が勝手に会社を変え始めた(自分たちで考え、自主的に問題を見つけて解決しようとし始めた)流れは、どんどん周囲の人間も巻き込み、ミーティングの参加人数は拡大していきました。

そんなふうにして、「ISOWAをどんな会社にしたいのか」「自分はどんな仕事をしたいのか」といったことを、自ら考える社員が徐々に増えていったのです。

この流れは、さらに「何のために働くのか」という問いにまで発展し、それぞれが深く考えていくことになりました。

そんな社員の姿を見て、思いました。いい会社とは、福利厚生の整った会社や、定時に帰れる会社ではなく、社員一人ひとりが何のために働くのかという問いを常に持ちつつ、ありたい姿に向けて努力しながら、そこに一歩一歩近づいていく会社ではないかと。

言われたとおりにやっていればいい会社とは違い、そのような働き方は決して楽じゃありません。

でも、そのぶんだけ味わえる達成感や充実感は大きいはずです。そういう状態の会社=社風のいい会社をつくることこそが、自分のやるべきことだと確信しました。この思いのもとに、2006年、ISOWAは「世界一社風のいい会社をめざそう!」という経営理念を打ち出しました。

 

プロジェクト型研修をきっかけに変化と手応えを感じる

●経営理念を打ち出したのと同じ頃、「プロジェクト型研修」というスタイルを採用していますね。

これは、風土改革の火を灯し続け、広げる仕組みとして取り入れました。その代表的な事例が「社員満足調査隊」です。

社員満足度調査を進めるためのプロジェクトとして始まりましたが、そもそも「社員満足とは何か」をメンバーが考えに考えて、それをていねいに調査項目にしていきました。

つまり、自分たちでプロジェクトの目的を考え抜き、自分たちのものにすることによって、楽しく、納得のいく成果を出していったということです。

このようなプロセスを通じて得られる達成感や満足感、成功体験そのものが人材を大きく育て、同時に、社内でのインフォーマルなコアネットワークがつくられることを発見しました。

それまでの研修は教育体系を作成して実施していましたが、この事実に気づいてからは、ほとんどをプロジェクト型研修にシフトさせました。

 

●プロジェクト型研修は、風土改革そのものにも影響を与えたのですか?

プロジェクト型研修を導入した当時は、まだ風土改革と事業や業績とは別ものだと考えていました。しかし、その認識に変化が出てきました。きっかけは、お客様から指摘いただく社員の変化についての声でした。

「ISOWAさんの社員は指示されなくても自分から考えて、主体的に動くようになりましたね」というような評価が多くなったんです。

また、風土改革なんかに取り組んで大丈夫なのかと懐疑的に見ていた一部のお客様からも、その成果が社員の仕事に表れてきたというフィードバックをいただいたのです。「ISOWAさんとつき合うと、自社も変われるかも」という嬉しい声もありました。

 

私は、自分が風土改革の意味や価値を少し狭義に定義していたことに気づきました。長い時間をかけて地道に取り組んできた風土改革は、業績という成果と当然結びつくはずだという方向に、考え方が変化していったのです。

それまで風土改革に取り組んできた社員たちも、きっと私同様、業績というかたちでより明確に成果を出したいと考えているだろう、という手ごたえも感じるようになりました。2010年に、「業務のど真ん中で風土改革の成果を出す」と明言した背景には、そのような経緯がありました。

この頃には、会社をよくしたいという思いを社員と共有できているという手ごたえを感じるようになり、業績も向上していきました。

しかし、業績向上が最終目的ではありません。いわば、頑張ってきた自分たちへのご褒美みたいなものだと考えています。

 

そもそもを考える土壌が、軸足のある戦略へと変化

● 2011年に掲げた「ISOWAは止めません、止まりません」という事業戦略は、その流れから出てきたものですね?

これは「だんこら」というプロジェクト型研修に参加したメンバーたちと一緒につくり出したものです。

ISOWAは機械を売るためにメンテナンスなどの付属的なサービスをやっている、という認識がまだ主流だった当時の社内では、あまりピンとこなかったようです。

私としては、風土改革で培ってきた組織の力は、機械の故障対応や整備以外にも、お客様との対話を通した関係構築といった部分で、サービス分野により生かせるはずという仮説があり、それを全社の戦略として定められないかという意図だったのですが。

社員の多くは、サービス部門だけの戦略だと受け止めたり、当のサービス部門からも、ただでさえ忙しいのに、さらに負荷が増えてしまうではないかと反対の声が上がりました。

それでも私には、ある確信がありました。風土改革で形成されてきた「そもそもについて自ら考える」土壌があれば、この戦略の本当の狙いについて、いずれ本質的な議論がなされるはずだと。そのために、具体的なことよりも「言葉」として、新しい考え方をまず社内に投げ込んでみたのです。

 

●新たな仮説を投げ込んだ効果はありましたか?

さすがに社員一人ひとりの意識の中にしみ込んでいくには時間がかかりましたが、それは風土改革のプロセスではいつも当たり前のことです。人の意識を変えることにチャレンジするのですから。

「ISOWAにとってサービスとは何か」をめぐる議論を重ねたことによって、サービス部門の人たちの意識が前向きに変わり、当初あった不安も払しょくされていきました。

また、サービスへのアンテナが立ちにくかった技術部門の人たちにも、機械を止めないことに対する関心が徐々に高まってきたのです。

約3年間の議論を経て、「ISOWAは止めません、止まりません」を当社の本格的な戦略として検討するための足腰ができ上がってきたと言えるかもしれません。

 

世界一社風のいい会社づくりへ

●そこで次の一手を打ったわけですね。

「止めません、止まりません」を当社の戦略として真正面に据え、満を持して議論を始めたのが2014年の「戦略言語化ミーティング」です。

これには、新たな戦略への取組みを始動するという意味あいだけでなく、次のISOWAの経営を担う人たちをこの局面で巻き込み、戦略策定とともに幹部育成を同時に実現したい、という思いも込めています。

現在も継続中ですが、そこでは従来の延長線上にはない、お客様とISOWAの未来をひらくための骨太な戦略議論が、いくつかの段階を経て磨き込まれているところです。

 

●ここまでの議論はどのように進展しているのでしょうか?

まずは、「止めません、止まりません」は誰のため、何のためなのかを、あらためて確認しました。段ボールを製造する機械の寿命は約20年ですから、仮に今ご注文をいただいたら、次の注文は20年後です。ともすると、問い合せがあってから受注→設計・製造→据え付けまでのプロセスのほうに目が向きがちですが、納入した機械を通じてお客様との不断の関係性を維持・継続し、20年後のリピート率を100%に近づけることが目標です。そのためのキーになるのが、ISOWAのサービスによって、お客様の機械が止まらないようにすることなのです。

ただし、すべてのお客様が、機械が止まらないことに対して同等に価値を置かれるわけではありませんから、そのことに価値を認めてくださるお客様を想定して、特定しました。そして、そのお客様層に対して、具体的にどのような価値を提供できれば、もっと満足していただけるかを考えます。

あくまでそれは仮説に過ぎませんから、ISOWAの新たなチャレンジに関心を抱き、一緒にやってみようと共感していただけるお客様と、その仮説を実践→計測→検証→修正していくという流れです。

 

●この議論に磯輪さんご自身はどのようにかかわっているのですか?

私も検討メンバーの一人として積極的に参加しています。社長として常日頃から考えていることも、率直に議論の場に投げ入れますが、それが呼び水になって対話が始まり、私一人では絶対に考えつかないようなことが戦略仮説として出てくることが少なくありません。社長と社員の対等な議論を通じて、より多くの社員が「世界一社風のいい会社づくり」に積極的に参画できる状態に少しでも近づけたいと考えています。

一緒に議論するメンバーは、議論の段階ごとに区切って、そのつど手を挙げて参加したいという人を募り、提出されたレポートの内容から厳選しています。

自分こそ改革の主役だと自認している人たちが選抜にでは漏れることもあり、いい意味で、社内のゆらぎが生じているように感じています。直近の選考時には、全社員270人中70人もの応募があり、嬉しい悲鳴でした。

このようにして、ISOWAの理念や事業が次の世代に、自然なかたちで着実にバトンタッチされていくのを実感しています。